第2話

放課後
48
2018/11/10 14:27
轟  信弥
轟 信弥
ごめん、今日は一緒に帰れない。
先生に頼まれて、転校生の学校を案内する事になった。


同日の放課後、真妃が信弥にメールをすると、そんな風に返って来て、真妃はムッとした。

「 いつもなら、待ってろって返ってくるのに。何で今日に限って..。」

そんな事を呟きながら、トボトボと廊下を歩いていると、空き教室から突然声が聞こえた。

「 と、轟信弥くん。お願いがあるんだけど..。」

女の子の声だ。どうやら、その空き教室には信弥もいるようで、他の人の声がしない事から、恐らく今空き教室に居るのは2人だけなのだろう。けど、信弥は転校生に校内を案内していたのでは無かったのか?そんな風に真妃が考えていると、唐突に聞きたくない言葉が聞こえた。

「 初めて会った時から、ずっと好きでした。わ、私と..。付き合って下さい!」

その言葉に、真妃は思わず息を呑んだ。確かに、信弥はカッコいいと学校内ではかなり評判で、先輩からも後輩からも女子に人気がある程なのだ。多少の告白は日常茶飯事ではあると真妃も分かっている。けど、やはりどうしてもそれを受け入れられない。信弥は、今彼女が居ないため、狙っている女子は少なくないのだ。"またいつもの様に断ってくれる。"そう信じていた真妃は、空き教室から発せられる声を、耳を澄まして聞いていた。すると、予想外の言葉を耳にした。

「 ..いいよ。俺で良ければ。」

その言葉を聞いた真妃は、ショックのあまりに両手で口を抑えた。その相手は誰と思い、扉の窓からチラッと顔を覗かせると、

なんと、目に嬉し涙を浮かべて微笑む西条月だった。
真妃は、その場を走って後にした。大粒の涙を流しながら。"何で私じゃないの?""何であの子なの?"色々な思いを馳せながら、全力で走った。"私は可愛くないから、幼馴染としか見れないから、私じゃないの?"今日会ったばかりの転校生に一目惚れされて告られ、それを受け入れた信弥も同じように一目惚れをしたので受け入れたのではないか。そんな風に考えれば考える程、涙がとめどなく溢れてくる。

「 もう嫌..何処か、何処か別の所に行きたい..ッ」



どれ程走って、どれ程泣いていたのだろうか。真妃は人気のない公園のブランコに座り、涙で目を腫らし、その上涙目を浮かべながら空を見上げていた。空は、無情な迄( マデ)に澄んだ茜色の夕焼けで、乗っているブランコもキーコキーコと単調な音を立てて揺れている。

「 私に、足りない物って、何なんだろ。ずっと一緒に過ごしてきたのに..。」

また頬に一筋の涙が零れ、そして制服のスカートに滴った。"もう一緒に帰れなくなる。"そう思った瞬間、寂しい気持ちと、嫌だと思う気持ちが交差し、自分でも本当はどう思っているのか、分からなくなってしまった。

「..私は、どうすればいいの..?」

その呟きは、誰も応える事もなく、静かで澄んだ茜色の空に溶け込んでいった。

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