イライラしていたので前をよく見ていなかった。
すぐに謝りぶつかった人を見る。
相手は怒り口調で言いながら私をにらみつけた。
(もう最悪……。全部榎本先生のせいだし……)
せっかく理科の時間が楽しみになってきたところだったのに嫌なこと続きでまた──
素直に謝ったのが良かったのか、ぶつかった相手の人は私を許してくれた。
その人は本当に申し訳なさそうに私の顔をのぞき込んだ。
そう言って笑うその人は結構──
お昼に机を合わせてお弁当を開き、私が机をバンッと叩くと由奈は目を大きく見開いて答えた。
由奈はしれっとした顔で答えた。
思わず笑みがこぼれる。
由奈に言われ、話そうとしていたKくんの事を思い出す。
今日までの成り行きを由奈に話した。
動機が不純で愛想つかされちゃうんじゃないかと不安げに由奈を見ると、ニッコリと笑ってくれた。
珍しく由奈が食いついてきた。
由奈の言葉にドキッとする。
思わず照れくさくなった私は由奈の背中をバシッと叩いた。
だって……もしかしたら本当に運命の相手かもしれないって、私も思ったから。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!