第6話

〈2 落書きの返事〉3
1,941
2018/12/28 01:56
イライラしていたので前をよく見ていなかった。
佐倉理緒
佐倉理緒
ごっ、ごめんなさいっ!
すぐに謝りぶつかった人を見る。
桐生慶太
桐生慶太
……~ってーな!
相手は怒り口調で言いながら私をにらみつけた。
佐倉理緒
佐倉理緒
ごめんなさい……
(もう最悪……。全部榎本先生のせいだし……)
せっかく理科の時間が楽しみになってきたところだったのに嫌なこと続きでまた──
桐生慶太
桐生慶太
あ……、や、ごめん。こっちもよく見てなかったから
素直に謝ったのが良かったのか、ぶつかった相手の人は私を許してくれた。
桐生慶太
桐生慶太
つかごめんね? 男子かと思ってキツい事言っちゃった……
その人は本当に申し訳なさそうに私の顔をのぞき込んだ。
佐倉理緒
佐倉理緒
あのっ……! いや、大丈夫です……ちょっと怖かったけど
桐生慶太
桐生慶太
そっか、良かった
そう言って笑うその人は結構──
佐倉理緒
佐倉理緒
かっこよかったよね!
お昼に机を合わせてお弁当を開き、私が机をバンッと叩くと由奈は目を大きく見開いて答えた。
月本由奈
月本由奈
……誰が?
佐倉理緒
佐倉理緒
さっき理科室でぶつかった人!
月本由奈
月本由奈
あぁ、にらみのきいてた彼?
佐倉理緒
佐倉理緒
うん! あ~名前くらい聞いておけば良かったな~
月本由奈
月本由奈
あれうちらと同じ学年色だったから探せばすぐ見つかるんじゃないの?
由奈はしれっとした顔で答えた。
佐倉理緒
佐倉理緒
ええ~! ほ、本当!? 由奈ってばチェック早いよ!
月本由奈
月本由奈
別に? 理緒はぶつかってあたふたしてただろうけど、あたしはぶつかってないし何となく気にして見ただけだよ
佐倉理緒
佐倉理緒
そっか~同じ学年かぁ! そっかそっかぁ~
思わず笑みがこぼれる。
月本由奈
月本由奈
あ、そういえばさ。今日の理科なんで真面目に授業受けてたの? 理緒にしちゃ珍しくない?
由奈に言われ、話そうとしていたKくんの事を思い出す。
佐倉理緒
佐倉理緒
そうそう! それなんだけどね? 実は理科室の机に落書きして消すのを忘れちゃったらさぁ、それに対して返事が書かれてて!
今日までの成り行きを由奈に話した。
月本由奈
月本由奈
なるほどね~。だから最近理科の授業を嫌だって言わなかったわけだ
動機が不純で愛想つかされちゃうんじゃないかと不安げに由奈を見ると、ニッコリと笑ってくれた。
月本由奈
月本由奈
動機は何であれ、理緒が真面目に授業を受けてさえくれれば何も言わないよ
佐倉理緒
佐倉理緒
ふふふ。なんか由奈、先生みたい
月本由奈
月本由奈
それはそうと、そのKって人がどんな人なのか目星はついてるの?
珍しく由奈が食いついてきた。
佐倉理緒
佐倉理緒
まだ全然! でも男子だと思う。自分のこと‘俺‘って書いてあったし
月本由奈
月本由奈
へぇ? 良かったじゃん。運命の相手かもよ?
由奈の言葉にドキッとする。
佐倉理緒
佐倉理緒
う、運命って……。もう! 由奈ってば気が早いよ!
思わず照れくさくなった私は由奈の背中をバシッと叩いた。
だって……もしかしたら本当に運命の相手かもしれないって、私も思ったから。

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