第2話

〈1 落書き〉
3,463
2018/12/17 05:11
桜咲くこの季節。
新たな高校生活の期待に満ちた一年生。キラキラとした顔で登校し、友達作りに励む毎日。
大学受験の年を迎え、新たに気を引き締めろと言われる三年生。新学期のテストが何点取れるのか暗雲をちらつかせる表情で登校してくる。
一方、二年に上がった私は理科室で授業を受けながら窓の外を眺めていた。代わり映えしないこの日常がまた一年続くのかと思うとついついため息が漏れてしまう。
佐倉理緒
佐倉理緒
あーあ、つまんない。だいたいさ、二年生って何すればいいわけ? だんだん慣れ親しんできたこの学校はクラス替えもないし、新しい出会いとかないし、彼氏どうやって作ればいいの!? ねぇ? 由奈ぁ
顕微鏡をのぞきながら親友の月本由奈に愚痴る。
月本由奈
月本由奈
えー? って言うか、今彼氏作らないといけない? 理科の実験中に?
由奈は私の話なんて右から左。
佐倉理緒
佐倉理緒
もう、由奈はいい子ちゃんなんだから。もういいし
私は机に突っ伏した。
佐倉理緒
佐倉理緒
あーあ……運命的な出会いとかないかな。……つまんないの
そのまま顔を横へ向けると筆箱からシャーペンを取り出した。
左腕に顔を乗せ、右手でカチカチとシャーペンの音を鳴らしてはしまい、鳴らしてはしまい……相手をしてくれない由奈にガッカリした。
佐倉理緒
佐倉理緒
あ~つまんないの
またそうつぶやくと、それをそのまま机に書く。
‘あ~つまんないの‘

ノートに書くのと机に書くのとではシャーペンのなめらかさが違う──
榎本先生
榎本先生
こらっ
佐倉理緒
佐倉理緒
きゃっ!
やわらかい何かで叩かれると私はあわてて起き上がる。
榎本先生
榎本先生
俺の授業中に寝るとはいい度胸だな
佐倉理緒
佐倉理緒
榎本先生! ご、ごめんなさい!
教壇の前にいたはずの先生はいつの間にか私の背後に回り込み、丸めた教科書を片手に私を見下ろしていた。
榎本先生
榎本先生
佐倉、ちゃんと勉強しておかないと来年の受験で困るのはお前だぞ
佐倉理緒
佐倉理緒
はぁ~い
少しシュンとした顔を見せると榎本先生は隣のグループへと移った。

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