練習に励んでいる間、Kくんとのやり取りも順調だった。
‘そーなんだぁ。Kくんは本当に理科が好きなんだね。他に好きな教科とかあったりするの? ちなみに私は家庭科が好きだよ!‘
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‘理科好きだけどやっぱり体育かな。もーすぐ体育祭あるし、楽しみだな‘
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‘私は体育苦手。Kくんは競技何に出るの? 私はバドミントン‘
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‘俺、バの付く競技。どこにいるかバレたら恥ずかしいし‘
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‘ずるーい! 私なんて運動おんちだから正体すぐバレちゃうじゃん! バドミントン見に来ないでください……‘
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‘(笑)Sのバドミントン姿見に行くよ。探すね! 運動おんちそうな奴‘
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‘ひどーい! 私だってKくん探すし!‘
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‘いーけど、バスケもバレーもバドも全部バがつくから探せないと思うけどね(笑)‘
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‘もういい……‘
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‘ごめんって! まあとりあえず体育祭楽しみだな! もう明日だぜ? 幸運を祈る‘
冗談を言い合えるようになり、Kくんとの距離が近づいた気がした。
そしてじんわりと汗ばむ日が続き、体育祭当日を迎えた。
生徒会長の選手宣誓から体育祭が幕を開けた。
クラス対抗トーナメント戦なので負けてしまった時点でその競技は終了となる。
そのため競技がすぐに終わらないよう勝ち進もうと、どこのクラスも必死だ。
早速試合が始まる。私はKくんの正体を探るべくこっそりバスケエリアに行こうとするがあっけなく由奈に見つかり連れ戻された。
テニスの試合が終わると今度は男子のバスケの応援にやってきた。
由奈の話に耳を傾けるふりをして、桐生君を探した。周りを見渡すがどこにも姿は見当たらない。
(桐生君は‘バ‘のつく競技じゃないのかなぁ……)
すると由奈が私の腕をパシパシと叩いた。
私は桐生君を探しているのでクラスの男子の対戦相手なんて正直どうでもいい。
思いも寄らぬ名前にバッと振り向くと、コートの真ん中には桐生君が立っていたのだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!