第5話

最初で最期の贈り物~🏫シリーズ~
2,825
2018/12/08 04:11
ガタンゴトン、ガタンゴトン電車の音
ねぇねぇ、トキくん!
この辺りで事故、あったよね??
え?
あぁ……、あったなぁ。
7、8年前だったっけなぁ?
もう、そんな前になるのかぁ…!
正確には7年前の今日、〇〇年の△△月□□日。
忘れもしないあの日。
もう少しで差し掛かる『大曲』で起こった事故。
7時過ぎだったよなぁ……。
そぉそぉ!
学生さん達も多くてさ……!
かわいそぉだったよね〜。
『大曲』とは、この電車がもう少しで差し掛かろうとしている急カーブの事。
余りにも車体が傾くため、電車は急減速する事になっている。
私の住む街の人々には『大曲』という言葉で通じるくらいの有名度だった。
―――――――遡ること、10年前
先生
新入生代表の言葉。
1年1組、野々宮あなた。
あなた

はいっ。

自己紹介がまだだったね。
私は野々宮あなた。
中学受験を満点の主席で通過したため、今は入学式の新入生代表の言葉を言うところ。
つまり、中学1年生。
シーンと静まる中、アイツが口を開いた。
重岡大毅
なぁなぁ!
アイツの髪の毛茶色やん!
中学って髪染めてええん??!
クラスメート
しげ……っ!黙れ……っっ!!小声で
重岡大毅
えぇ……!
だって〜!!
私が壇上へ上がり、周りがシーンと静まっている中、アイツがそう言った。
焦る、先生方を横目に私は代表の言葉を言った。
こんな奴のせいで大恥物になったけど。
何よりもうざかったのが、まさかの同じクラス。
しかも隣。
重岡大毅
……あんれ??
茶髪の新入生代表やん!
あなた

…………。

重岡大毅
なぁなぁ!
髪の毛って染めてもええの?
あなた

…………染めてないし。

重岡大毅
だって、茶色やん!
クラスメート
しげ、やめとけって。
重岡大毅
え?
だって気になるやん!
なんで茶髪なーん??
あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!!
めっちゃ腹立つ!!!!
あなた

わざわざ生まれつきって言わねーと分かんねぇのかよ!
このクソザルっっ!!!

重岡大毅
んな……っ??!!
なんやとーっっ!!!
どー見てもサルやないやろ!!!
あなた

んな事見たら分かるわっ!
サルに値すると思ったからそう例えたんでしょ??!

重岡大毅
んーっ!
難しい言葉使うなやっ!!
アタイスルって何やねんっっ!!
あなた

そんなのも分かんないのか、このガキ!!!

重岡大毅
こんのぉ……っ‼
どっちから手を出したかは覚えてない。
とりあえず殴り合いの大喧嘩。
とりあえず、体育教師が止めに来る始末に。
これのせいで私と重岡は、一躍有名人となった。
2年、3年もまさかの同じクラス。
腐れ縁と言う物を実感した。
言うまでもなく、毎日大喧嘩。
野球少年で皆の人気者、笑顔で友達の多い重岡。
部活に入らず勉強ばかり、1匹狼で柔軟性のない私。
正反対の私達がなんでこんな事に……。
3年になると、
クラスメート
もうさ、喧嘩するほど仲いいってゆーし、付き合っちゃえば??
クラスメート
仲悪い通り越して仲いいよね〜。
クラスメート
野々宮と重岡って割とお似合いだと思うんだけど。
と言う馬鹿げたものばかり。
冗談じゃない!
なんで私がコイツなんかと…っ!
とまぁ、なんだかんだやってるうちにあっという間に卒業。
重岡は、うちの中学の大半の生徒が行く、共学高校に合格。
私は、遠く離れた女子高校に合格し、バラバラの道に行くことになった。
高校生になり、何ヶ月かたったある日の夜。
アイツから電話がかかってきた。
あなた

……もしもし。

重岡大毅
«あ、もしもし?
俺やけど〜!
あなた

いや、誰だよ。
きりますね〜。

重岡大毅
«お前、その態度……っ!
俺やってわかってるやろ!!
あなた

もう……。
なんなのさ、なんの用??

重岡大毅
«いや、大した事じゃないんやけど。
……そーいや、女子校ってどうなん?
上手くやってんか?
あなた

私みたいな感じの子が多くて楽だけど。

重岡大毅
«うわ…。
お前と同じ奴とかつまんなそう…。
あなた

うるさいわ。

重岡大毅
«あ、お前さ!
いつも何時の電車乗ってん?
あなた

えっと……、7時30分発のやつだけど。

重岡大毅
«ふーん……。
じゃ、明日さ、7時発のに乗ってな!
じゃ!
あなた

は?!
ちょ……、……きれてるし。

感のいい女子なら気づいたのだろう。
でも私には分からなかった。
明日が自分の誕生日だって事に。
眠い目を擦りながら、いつもよりも3本早い電車に乗る。
重岡のやつ……。
何考えてんだか……。
あぁ、もうすぐ『大曲』か……。
そんな事を考えながら反対車線の方を見る。
電車が減速すると同時に反対車線にも電車が。
すると、電車の窓、1枚1枚に……。
『誕』
『生』
『日』
『お』
『め』
『!!!』
『好』
『き』
『やで!』
と書かれた紙が貼られていた。
そして1番後ろの車両で、アイツがあの笑顔で立っていた。
アイツ、凄いな……。
電車がここに差し掛かれば、反対車線の電車の文字を読み取れる程に減速する。
それを利用して、こんな事するなんて……。
あなた

文字数、考えなさいよ……、バカ……。

そう思った矢先、あの事故が起こった。
―――――――現在
なぁ、クミ。
結局、何が原因だったん?
んー…、分かんないや……。
原因は、運転手による不注意が発端となった。
あ、もうすぐで『大曲』だよ?
あーあ………。
アイツ、またいるなぁ……。
この10年間、△△月□□日になると、必ずこの電車にアイツが乗る。
通勤時間には、まだ早いくせに。
『大曲』で減速してるため、手を振ってみる。
その瞬間、アイツの顔が翳った。
……アイツ、霊感・・あったっけ……?
私、あの事故で死んじゃったの。
あの日、早い電車に乗った日に限ってあの時間帯に事故が起きた。
神様、ひどいよ。
あんなにタイミングでこんな事したら……。
アイツが、自分を責めちゃうじゃん……。
案の定アイツは、10年間、毎年この日にこの時間の電車に乗り、私の乗っていた電車を見つめ、顔を曇らす。
ねぇ、重岡。
私、そんなに執念深くないから。
そりゃ最初は、「最期の最期まで、コイツ……っ!」って……思ったけど、私、知ってるから。
私の葬儀のとき、家族以外で泣いてたの、アンタだけだよ?
友達がいない私には、本当に嬉しかった。
……不謹慎だけどね(笑)
私が成仏できないのは、方向音痴なせいで、あの世への行き方を迷ってるだけ。
決して、アンタのせいじゃない。
だから、幸せになって、重岡。
アンタが幸せになったら、私も成仏するから。
大好きだよ、重岡。
―――――――the end










こんにちは、作者でーす。
今回のお話は、もももももっさんリクエストの『とりまバッドエンド✖しげちゃん』ということでしたが、どうでしたか??
ご期待に添えましたかね……?
………悲しい話ですね😭😭
やっぱり、小説はハッピーエンドがいいなぁと思う今日この頃。
お気に入り🌟、いいね❤、リクエスト、コメント、お待ちしてます!
では、また次の作品で!
バイバーイ👋

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