無我夢中で次のページをめくった。
「...はぁ?」
そこにあったのは黒塗りのページ。
全く読めない。ぐちゃぐちゃしていて幼稚園児の落書きのようだ。部屋の電気に透かしても読めない。
面白かったのに残念だ。
...にしても不思議な話だった。
春はきっと死ぬものだと思っていた。
なんだかホラーっぽかったし。
夏はそれを止めるために僕と一緒にいればいいんだというメンヘラ染みた発言をしたのだと思う。
夏にとって春は大切な幼馴染みだろうし。
ページを少しめくるとすぐに次の話があった。
『ジトジト』 皐月輝久
本当ならこの次は夏ちゃんの話だから飛ばしたいところだが、飛ばすのは嫌いなので順番に読むことにする。
短ければいいのだが、と思いながらも私の手はページをたぐろうとしていた。
元々怖い話は好きだったから惹かれる。
タイトルはどれも聞いたことがないものばかりだ。
さて、次の話を読もう。
掃除機を部屋の隅へ寄せて、ベッドの上で布団に潜り込みながら、私は目をかがやかせて読み始める。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。