第2話

チャンネル01 "スパイダー”
3,212
2018/09/20 02:34
私の母は、ある一点を除けばごくごく普通の母だった。

スーパーの特売品をチェックし、バラエティー番組にツッコミを入れまくる。ときどき理不尽で、口うるさい。そんなどこにでもいる普通の母は、倒れる前にこう言った。
いい、ヒロちゃん。正面から向き合って、救ってあげようなんて思っちゃ駄目よ
果たしてそれは忠告か、それとも自分に対する戒めだったのか。

鬼気迫る様子に圧倒されて、私はただただ頷いた。母の言う、救っては駄目な存在が何かも分からず、そうしなければいけないという思いだけで母の教えを胸に刻んだ。

けれど母さん、私は今日、あなたに背きます。
ロコ
ロコ
こんにちはぁ、ロコで〜す。今日も節約レシピを紹介するよぉ
顔にソバカスの浮いた十代の少女が、画面に向かって愛想よく手を振った。伸ばした語尾に媚びた演技、それまで誰にも注目されなかった悲しい少女。
ロコ
ロコ
と思ったら大間違いだ! 今日で料理動画は終わりにする!
果たしてどれだけの人間がこの動画を見ているだろう。しかし数など気にしていなかった。ひとりでもいい、私の決意を聞いてくれ。
ロコ
ロコ
心霊動画のはじまりだ!

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