第32話

ケイドロ Ⅱ
810
2019/01/13 13:14
町の人
うわぁぁぁぁぁぁ!!
町の人
鬼だぁぁぁぁぁぁ!!
鬼...?


声がする方を目を細めて見る。


いた。鬼が。

金棒を振り回している。

幸い、誰も怪我をしていない。


















逃げよう。
如月 千歳
彩葉!逃げるぞ!
夏目 彩葉
は?え?あ、う、うん!
オドオドしすぎだよ。
如月 千歳
...
夏目 彩葉
ち、千歳...?逃げないの?
如月 千歳
...囲まれた。
夏目 彩葉
え?
彩葉はそう言って、辺りを見渡す。

そして、動きが止まる。



















鬼に、囲まれていた。


前にも、後ろにも、右にも、左にも、

鬼がいた。


体が俺より大きな鬼

痩せ細った鬼

太った鬼

1つ目の鬼


いろんな“カタチ”をしていた。





















鬼が俺と彩葉めがけて走る。



俺はとっさに、彩葉を庇う。



















鬼が目の前で金棒を振り下ろした。


















その後の記憶は、何もない。





















─────────────────────────────────





















ここは、どこだろうか。



座り込んでいる床が、冷たい。

辺りは灰色の壁。

多数の人間もいる。


そして...



















無数の鬼。



















俺は確か...


鬼に囲まれて、鬼が金棒を振り下ろして、

それから...





















何だっけ。



















はっ...


彩葉はどこだ?

彩葉はどこに...!


俺は、辺りを見渡す。


大丈夫だ。

彩葉は俺の横で寝ている。


寝息を立てているから生きているって分かる。
如月 千歳
良かった...
夏目 彩葉
ん...
彩葉が、目を開けた。
夏目 彩葉
ここ、どこ...?
如月 千歳
分からない。
でもきっと、鬼の巣だ。


確か放送で、鬼の巣にいる人間を
10分おきに殺すって...

今はゲームが始まって何分後だ?

もし、10分後だとしたら...

















ウシビ
ウシビ
『はーい。10分経ちましたー。』
サシビ
サシビ
『鬼の巣にいる人間を殺しまス。』


















そう、放送が流れた瞬間、鬼が周りにいた人間を
殺し始めた。




















悲鳴、叫び、血の音。

沢山の“死”が聞こえる。


血が舞っている。

鬼が金棒を振り回して踊っている。




















俺は今、何を見てる...?

俺は今、何を聞いてる...?




















この光景は何だ...?

この音は何だ...?





















分からない。

全てが、分からない。





















気付いたら、人間が半分、減っていた。


沢山の血。

これを、どこかで...




















夢..だ...

彩葉が死んでいる夢...





まだ、彩葉は隣にいる。

生きている。


けど、ずっと叫んでいる。

声が潰れるんじゃないかというくらい。


















とうとう、鬼が俺と彩葉の目の前に現れた。



















背筋が凍る。


もし、夢が本当なら...


















俺は隣で泣いていた彩葉を庇うように抱き締める。





















俺は死んでもいい。

本当はものすごく怖い。

けど、俺はどうなってもいい。


だから、だから、彩葉だけは...































鬼が金棒を振り下ろす。




























終わりの合図だ。

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