第21話

デンゴンゲーム Ⅰ
892
2019/01/01 13:24
サシビ
サシビ
『もうすぐ夜が明けますヨ?』
花江 結
もう、そんな時間...
花江 結
今回は優しめなのかな...?
俺と先輩はあのあと、夜が明けるまで
辺りをぶらぶらと歩いていた。
片岡 楓
そうなんですか...?
花江 結
うん。
花江 結
私の時は、ずっとずっと
鬼に追いかけまわされてたから...
それって、凄く辛くないか...?



















花江 結
花江 結
楓君!見ちゃ駄目!
突然、先輩はそう言って俺の視界を手のひらで
ふさいだ。






















先輩、目を隠さないでも分かりますよ...



















小さい頃、自分でその世界を作ってしまったから。


匂いで分かる。





















“死”の世界。






















ずっと、頭から離れないこの匂い。


血と憎しみと恐怖を混ぜたような、そんな匂い。























片岡 楓
先輩、大丈夫です。
俺はそう言って、先輩の手を
そっと、どけた。

そして、優しく、微笑んでみせる。
花江 結
楓君...
先輩は、とても心配そうな顔をしてこちらを
見てきた。
片岡 楓
ははっ。大丈夫ですよ。
片岡 楓
少しだけトラウマになってるけど...
俺がそう言うと先輩は、俺より背が低いくせに
背伸びをして、俺の頭を「わしゃわしゃ」と
撫でた。
片岡 楓
わっ!ちょ、先輩?
花江 結
うん!楓君は強い強い!
先輩はそう言って笑った。





















先輩。俺は、強くないですよ...


















俺は、弱い。


















サシビ
サシビ
『はーい、皆さーン。』
サシビ
サシビ
『夜が明けましタ。』
サシビ
サシビ
『次は、最後のゲームでス。』
サシビ
サシビ
『ゲームは、伝言ゲームでス。』
サシビ
サシビ
『僕が町に、ある言葉を広めまス。』
サシビ
サシビ
『それを絶対に
聞かないでくださイ。』
サシビ
サシビ
『夜明けまでに覚えていたら、
サシビ
サシビ
ゲームオーバーでス。』
サシビ
サシビ
『では...』






















『ゲームスタート。』



















伝言ゲームか...

人が多い所に行くのは危険だな...
片岡 楓
先輩。
花江 結
ん?
片岡 楓
森、行きましょう。
花江 結
も、森...?
片岡 楓
はい。
この町には小さな森がある。

そこに身を潜めれば、サシビが広める言葉も
聞こえないかもしれない。
花江 結
じゃ、行こっか。






















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あともう少しで、森に着く。

辺りはもう、暗くなりかけている。


もう終わるんだ。このゲームが。




















俺が、そんなことを考えていると、遠くの方から
大きな声が聞こえた。



































『夜が明ければ、花江結は死ぬ。』

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