みんなが仲のいいやつと固まる昼休み。
俺、如月リクトは自席で本を読みながら、
購買のパンを食べていた。
俺に友達は一人もいない。
いや…俺は友達を必要としなかった。
別に友達とかクラスで1人でいないための存在
だから、1人でいいやって思う俺には友達は
必要なかった。
まぁ、唯一困るのはクラスでチーム分けとか
をする時くらいか…
それにしても俺の生きる意味ってなんだろ…
俺が死んでも悲しむやつなんていないし…
ふと、視界に入った黒板。
前の授業のことが書かれている。
日直は次の授業までに消さないといけない。
日直のやつ、何やってんだよ……。
そんなこと思いながら、俺は日直の代わりに
黒板を消してあげた。
そして、飲み物を買おうと、1階の自動販売機
に向かう。
すると…
階段を降り、角を曲がったところで、誰かと
ぶつかってしまいその人が持っていた資料を
全部床にぶちまけてしまった。
その声に俺は聞き覚えがあった。
俺がぶつかったのは、月野トウカ。喋り方で
分かると思うけど、いつも男口調で話す。
クラスでもいろんな意味で目立つ方だ。
月野は「ハァ…」と溜息を漏らすと、落ちた
資料を拾い始めた。
俺も手伝い、全部を拾うと月野に再度謝る。
そう言い、月野は階段を上っていった。
自動販売機に行き、お茶を買うと教室へ。
俺が席に着いたところで月野が俺に近づいてきた。
冷めた顔でそれだけ告げ、月野は自分の席に
戻った。
その日を境に何故か、月野と喋る機会が多く
なっていた。何気ない会話だけど普段誰とも
話さない俺にとってはかなり大変だった。
数ヶ月も喋っているとだいぶ仲良くなって…
ある日の昼休み、購買で昼飯を買って戻ると
俺の席が占領されてた。
ダルいと思いながらも、仕方なく屋上へ。
屋上の扉を開けると、広く青い空が広がって
いた。
屋上にはベンチが1つあったけど、そこには
トウカがいて座れなかった。
トウカは仰向けにベンチに転がって、手には
何故かスケッチブックを持ち、何か。書いている。
仲良くなった俺達。
いつの間にかお互いに下の名前で呼ぶようになっていた。
そう言って、トウカは起き上がると手に持つ
スケッチブックを見せてくれた。
そこには上手く男の子が書かれ、大きな鎌を
持っている。
何か俺に似てる気がするんだけど…。
楽しそうに話すトウカ。
その時のトウカは珍しく笑っていた。
能力とか、何歳児なんだよ…
でも……何か楽しそうだしいいか。
こうして昼休みは屋上のベンチで購買のパン
を食べながら楽しそうに”ザク”について話す
トウカに付き合っている。
いつも冷めた顔をしているトウカが笑ってる
のを見て、いつの間にか自然に俺も笑うこと
ができるようになっていた…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。