親が寝静まった頃、私はこっそりとキッチン
に来ている。
「炎よ、出ろ〜!!」とか部屋でやってみた
けど、全く出なくて恥ずかしい思いをした。
コンロの火をつける。
そして…
ボソッと呟く。
すると、火が空中に浮き上がった。
形を想像するだけで、炎は猫になったり、鳥
になったりした。
う〜ん…火種がないと操れないのかな?
火種さえあれば、大きさは変えれそうだし…
私はコンロよりも大きくなった炎の鳥の頭を
触った。
温度も調節出来るのか、炎を触ったけど、
熱いというよりは温かい感じ。
口元に笑みが浮かぶ。
スグに復讐したらバレやすくなっちゃうはず
だから…決行は1ヶ月くらいしてからかな。
炎を消すと、布団に入って眠りについた…
次の日、私は部活に行った。
やっぱり、戸田先生に怒られた。そんな私を
見て周りの人は笑っていた。
だけど、私は全く辛くなんか無かった。
1ヶ月もしたら、そんな説教なんかも出来なくなるんだよ、先生。
戸田先生は唾を飛ばして怒鳴った。
そんな怒ることに必死な戸田先生を私は心の
中で嘲笑う。
しかし、何故かこの日を境に戸田先生からの
いじめを受けることは無くなっていた…
〜約1ヶ月後〜
待ちに待った復讐の日。
夜が早くなり、外は既に暗い。そんな状況を
私は狙っていた。
凄く嫌そうな顔をしたものの、渋々と了承を
出してくれた。
メジャーがあるのは体育倉庫。
先生に頼み込み、一緒についてきてもらう。
私はポケットに手を入れる。
ポケットの中で予め入れておいた、ライター
を握り手を外に出した。
「持ってきてくれる?」と聞いたことに対し
「スグに出す。」と答えたところに違和感を
覚えたのか戸田先生の不思議そうな声が私の耳に届いた。
……けど、もう遅いよ、先生。
戸田先生が動く前に素早く体育倉庫のドアを
閉めて鍵を閉める。すると、ドアを叩く音が
聞こえてきて…
私はライターで用意しておいた新聞紙に火を
点けると、小窓から体育倉庫の中に入れて、
こう呟いた。
一気に炎に包まれた体育倉庫。戸田先生の
甲高い悲鳴が聞こえた。
…が、1分もするとその悲鳴は途絶えた。
悲鳴が途絶えても燃え続ける体育倉庫。
私は体育倉庫を見て、口元の笑みを消すことは出来なかった。
何処から来たのか分からないけど、如月君が
後ろの方から呟いた。
言葉的に私が燃やしたのは見ていなかった
ようだ。
そう言って、如月君は走り去った。
私は焦った声で消防車を呼ぶ。
スグに先生達が来て、消火活動を始める。
しかし、火は消える様子が全くない。
この火は私が命令しない限り消えないよ…。
少しして、遠くの方から消防車のサイレンが
聞こえてくる。
これで戸田先生は終わり。あとは大野だけ…
私はそう心の中で呟いていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。