高いビルの上でザクを待っていると、いつも
通りの姿でビルの上に着地した。
失敗かぁ〜…。
残念だけど、まぁ、面白かったしアリかな?
ユイちゃんは視界が狭かった?
周りの何人かはあの先生に訴えに言っていたのに…
もし、レン君が言いに行ったのがユイちゃん
が”黒い彼岸花”に復讐を望む前だったら結果
は変わっていた?
私には分からない。
だって、そんな未来にはならなかったから。
そんなことを考えながら、私は手元の分厚い
本に観察記録をつけていく。
ザクの呆れたような声が聞こえた。
人間といたから喋り方が変わった?
帰ってきたザクと話していて、そう思う。
人間といる時間が長いと喋り方も昔に戻る…
とか?
”リクト君”と聞き、ザクが少し肩を揺らす。
ザクの声は少し楽しそうでいい思い出なんだ
ろうと私は思った。
ザクの人間の頃、リクト君が死んだのは確か
何十年も前。ザクの言う”アイツ”ももう大人
になっているはず。
死んじゃったのか〜…
もし生きてたら話を聞きに行ってみようかな
って思ったのにぃ…。
私が不満そうな顔をしていたのか、ザクが
付け足しでそう言った。
グチグチ言いながらも、観察記録を書き終え
私は前のページを見返す。
あ、これこれ。リクト君の記録…
【名前】如月リクト
【年齢】XX歳
【願望】復讐
【記録】初めての復讐の願い
・
・
・
ビルの屋上に座ったザク。私もその向かい側
に座った。
私は話してって言ってないけど…
まぁ、自分から話してくれるみたいだし、
結果オーライだよね!!
そうして、ザクの昔話は始まった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。