第31話

願いが分からない少女 〜2〜
420
2020/02/23 12:48
月野 トウカ
世の中、不思議な花があるもの
だな…。
あまりの珍しさに、私は”黒い彼岸花”を地面から抜いて持ち帰っていた。
すると、何故か分からないが、自然と近くにあるダムに足を運んでいた。
月野 トウカ
……。
何だ、この自殺願望は…。
その時、私の頭は死にたいの一色。
そして、私はそのままダムから飛び降りた。
風が顔に当たり、髪がサラサラと擦れ合う。
水面にぶつかる直前、私の体は静止した。
月野 トウカ
ん?
天使
こんにちは!
月野 トウカ
こんにちは。
水面の上に立つのは私と同じくらいの白い翼を持つ金髪の女の子。
この子は何で水面の上に……てか…
月野 トウカ
君は天使か?面白いな。
天使
正解!神に見捨てられた天使!
月野 トウカ
神に見捨てられた、か…。天使
が私に何の用で時を止めた?今
のはほっとけば、勝手に落ちて
死んだぞ。
天使
トウカちゃんは選ばれたの!
月野 トウカ
何に?
天使
その”黒い彼岸花”に。
天使の視線は私が手にしてる”黒い彼岸花”に向けられていた。
天使
君は願いを叶えたい?
月野 トウカ
私は何も願ってないぞ?
天使
えっ?そんなわけないよ〜!!
”黒い彼岸花”は何かを願った人
にしか見えないもん。
月野 トウカ
本当だって。
思い当たる『友達が欲しい』という願いも、リクトが友達になってくれたから、既にその願いは叶っているはず。
天使
う〜ん…そんなことは……
頭を抱えて考える天使。
天使
…何か密かに願ってることとか
ないの?例えば…持病を治す的
な感じで。
持病を治す。その言葉に私の心臓は握り潰されるような感覚に陥る。
私は………半年後に死ぬ予定だ。
もう治せないくらい状態悪化しているから、あとは余生を楽しむ。それくらいしか出来ることはないらしい。
だからと言って、私は泣き崩れることも嫌と思うこともなかった。


ただただ、「あ、死ぬのか。」と思うだけ。
友達が出来た私に後悔はない。
月野 トウカ
特に思い当たらないが……。
天使
じゃあ、考えといて!また今度
トウカちゃんのところに行って
もう一度聞くから!
そう言うと、いつの間にか飛び降りたダムの上に立っていた。
月野 トウカ
願い、か…。
小さく呟くとその場に座り、スケッチブックを開く。
そして、見た記憶の通りに神に見捨てられた天使を描いてみる。
昔から人を描く時が癖になって、日頃から、その人の特徴を観察するようになっていた。
改めて見ると、美人だな。この枷は……?
左足首についた枷に目がいく。
神に見捨てられたってことは、堕天使?
だから、枷がついたのか?う〜ん…。
頭の中はぐるぐる回転して、答えが出ない。
これ以上考えても答えは分からない、と判断した脳は思考を停止した。
月野 トウカ
……まぁ、ゆっくりと願いでも
探すか…。
私はそう言い立ち上がると、歩き始め家へと向かった。

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