あまりの珍しさに、私は”黒い彼岸花”を地面から抜いて持ち帰っていた。
すると、何故か分からないが、自然と近くにあるダムに足を運んでいた。
何だ、この自殺願望は…。
その時、私の頭は死にたいの一色。
そして、私はそのままダムから飛び降りた。
風が顔に当たり、髪がサラサラと擦れ合う。
水面にぶつかる直前、私の体は静止した。
水面の上に立つのは私と同じくらいの白い翼を持つ金髪の女の子。
この子は何で水面の上に……てか…
天使の視線は私が手にしてる”黒い彼岸花”に向けられていた。
思い当たる『友達が欲しい』という願いも、リクトが友達になってくれたから、既にその願いは叶っているはず。
頭を抱えて考える天使。
持病を治す。その言葉に私の心臓は握り潰されるような感覚に陥る。
私は………半年後に死ぬ予定だ。
もう治せないくらい状態悪化しているから、あとは余生を楽しむ。それくらいしか出来ることはないらしい。
だからと言って、私は泣き崩れることも嫌と思うこともなかった。
ただただ、「あ、死ぬのか。」と思うだけ。
友達が出来た私に後悔はない。
そう言うと、いつの間にか飛び降りたダムの上に立っていた。
小さく呟くとその場に座り、スケッチブックを開く。
そして、見た記憶の通りに神に見捨てられた天使を描いてみる。
昔から人を描く時が癖になって、日頃から、その人の特徴を観察するようになっていた。
改めて見ると、美人だな。この枷は……?
左足首についた枷に目がいく。
神に見捨てられたってことは、堕天使?
だから、枷がついたのか?う〜ん…。
頭の中はぐるぐる回転して、答えが出ない。
これ以上考えても答えは分からない、と判断した脳は思考を停止した。
私はそう言い立ち上がると、歩き始め家へと向かった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。