俺は、有紀に起こされる前に下へ降りた。
無愛想に答えると、有紀が作った朝ごはんを口に含み、
バッグを持って家を出る。
朝の太陽がまだ少し低い位置にある。
早く出すぎたかな。
まぁいいか。
父さんと顔合わせずに済んだし。
まだ大雅は寝ているようだ。
大雅は時間ギリギリまで寝るのが癖になったらしい。
学校に着くと、まだ7:25だった。
人もあまりいない。
野球部やバスケ部の朝練に参加している人の声が聞こえる。
柳之助はいつも寝てるらしい。
先生は、注意するのをめんどくさがってしなくなった。
笑いながら教室に向かった。
教室の前まで来て、俺は驚いた。
嶺音は、もっと遅く来るのかと思っていたから、
拍子抜けだ。
しかも、勉強してる......。
医者って......すごい頭良くないとなれねぇやつだよな。
嶺音がもう将来のことを考えてるなんて驚きだ。
将来の夢なんて、考えたことなかった。
いつも強くなることしか頭になかったし。
やっぱり、ちゃんと考えた方がいいのか?
嶺音はきっぱりと答えた。
でもそれって、夢があるから言えるんだよな。
夢が決まってない側からしたら、不安にしかならない。
いきなりドアの方向から知ってる声が聞こえた。
なにやら柳之助と嶺音は呼び方がみんなと違うんだと聞いた。
柳之助は嶺音のことを『嶺音ちゃん』と呼び、
嶺音は柳之助のことを『ヤナギ』と呼ぶ。
いろいろエピソードはあるらしいけど、
詳しく知ってる奴はいない。
柳之助がバスケ部。
うん、そんな感じがする。
バスケ感(?)満載。
なんでも何も、人前では着替えられない。
プロテクター着けてることもあんまりバレたくないんだ。
柳之助、昔から嶺音をバスケ部に勧誘してたのか。
それも毎回断られてる感じだな。
そう言って柳之助は、さっさと教室を出ていった。
屋上?
教室では話しにくいこと?
そ、それって......?
もしかしなくても......。
ば......バレた!?
えぇ、えぇ、ありますとも!
でも、教えられない。
絶対無理!!
うっ......。
柳之助、鋭い。
言えない。
けど、隠せない......?
なんか良い言い訳ないのか!?
ああああああ!
どうしよ!!!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。