第9話

〈第二章〉3
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2019/01/04 04:40
(あーもー……。何でこうなっちゃったんだろ……)
衝撃的な一日から、一夜明けて。
あまりにも自分が思い描いていたビジョンとはかけ離れた彼との再会に、私はショックで昨日から何も手につかないような状態だった。
別に、芽衣や佐々木が言うように、彼を王子様だなんて思い描いてた訳ではなかった。
そりゃ……少女漫画みたいな助け方してくれた人だから、どんな人だろう、カッコ良かったらいいな……ぐらいは考えてたけど、純粋にまず、ちゃんとお礼が言いたいって気持ちが一番だった。
そして何とかその思いは叶えられたけど……。
その後の私の発言が、どうやら何か彼の地雷を踏んでしまったらしい。
(芸術コースの話題出した瞬間だったよね……。あれってそんなに、ダメな質問だったのかな……)
相変わらず真っ白なスケッチブックに頰を乗せて、私はぼんやりとそこから見える空を見つめた。
何をしていても、目を開けていても閉じていても、思い出してしまう。
この時ばかりは、自分の記憶力が少し恨めしいと思った。
眼裏に、胸に……全てに焼き付いた、あの時の彼の顔。
その表情には、痛みとか、悔しさとか……そんなものがいろいろ複雑に混じっているように感じた。
一体彼に、何があったんだろう。
どんなことが起こったら、芸術コースから普通科に移ることになるんだろう──…。
……そんなことを一日考えていたら、あっという間に放課後になってしまっていた。
ただでさえスランプ気味で周りから遅れてるのに、これじゃあ彼のことが気になりすぎて、綾城祭のテーマ決めるどころじゃないよ……。

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