〈隼side〉
”元カレ”
ってたった三文字が昨日から俺の頭を埋め尽くす
ましてや、、亜嵐くんなんて、、
敵うわけがない。
珍しく一番に来た楽屋
一人溜め息をついたら
タイミングよく開く楽屋の扉
そう言いながら俺の隣に座る
驚いて玲於を見ると
このまま黙っとくのも変だったし
俺も俺で、誰かに言ったらスッキリする気がしたから
コーヒー屋でずっと気になってる女の子がいる
ってこと
でもその女の子は亜嵐くんの元カレだった
ってこと
全部話した
”自信無くすことない”
ってその一言が少し俺を軽くした気がした
その会話が終わった直後に
また扉が開いて
そんな呑気な挨拶をしながら入ってきた亜嵐くん
そう笑いながら椅子に座る亜嵐くん
そう返事をしてから
楽屋を出る
自動販売機に行くと、ちょうど窓から外の景色が見えるようになってて
ガコンッって落ちてきた缶コーヒーを取って
外の景色を眺めながら蓋を開ける
眺めてたら、
外にあなたちゃんが歩いてて。
さすがに窓を開けて
あなたちゃーん!って叫べないから
また今度コーヒー屋に行った時で良いか
って思ってたら
変な男に絡まれてるあなたちゃん
あなたちゃんの顔はこわばっていくばかりで
”あなたちゃんが危ない”って
その一心で外へ出ていく
外に出たら
腕を掴まれてて
って声をかける
驚いてこっちを見たあなたちゃんの目には
涙が溜まってて
そう言いその男を睨むと
男居たのかよ…
って言って去っていった
か細い声で俺の名前を呼ぶあなたちゃん
そう言うと、
ってフワッって微笑むあなたちゃん
その顔はすごく大人っぽくて。
亜嵐くんと付き合う理由が分かった気がした
それから連絡先を交換して
新しい友だちの欄に
”あなた”って出てくる
そのことがすごく嬉しくて。
俺やっぱりあなたちゃんが好きなんだな
って、実感した
最後にニコッって笑顔を残して帰っていったあなたちゃん
あなたちゃんが見えなくなってから
会社の中に入って
急ぎすぎて自動販売機の横に置いたままだった
缶コーヒーを取ってから楽屋に向かう
二人は納得してなかったみたいだけど
俺からしたら
言ったら幸せが逃げちゃいそうな気がして
言いたくなかった
あなたちゃんは言ってる。ってことは知らずに、笑
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。