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ぐいっと凪さんと肩を組んで「なっ!」と声をかけると、肯定とも否定とも取れない返事をした。ピコピコ、シュンシュンシュン、ボンッ。凪さんの操作するスマホからゲーミング音が流れている。シューティングゲームだろうか、軽快な音が聞こえる。
玲王と凪さんがサッカー部になって数日、玲王の父親経由で申し込まれた練習試合らしい。スポーツ関連には非常に疎いため、強豪校らしいが名前を言われてもいまいちピンと来なかった。
そう言うとこ玲王は嬉しそうに笑う。
日程を教えて貰って、スマホのスケジュールアプリに予定を打ち込む。絶対空けとかないと、と強い意志を持ってスマホをしまった。
そして練習試合当日。白宝高校敷地内にあるサッカーコートで試合は行われる。今か今かと待っていると、カシャンとフェンスの触れる音がして相手高校のサッカー部であろう人たちがコート内へと入っていく。
玲王や凪さんも大きいけれど、相手の人達は背が高いことに加えて非常に仕上がった体つきをしている。
玲王に練習試合のことを教えてもらった後に少し調べて見たら、練習試合相手の高校は青森駄々田という青森の高校で全国大会常連の超強豪校だった。玲王に教えてもらった時はよく分からなかったが、全国常連だとか、”超”強豪なんて言われたらすごいと言わざるを得ないだろう。
相手の人と何か言い合っている様子だが、髪を結ぶ仕草がかっこよくて思わずじっと見つめていた。
青森駄々田のメンバーたちの豪快な笑い声が響き渡る。見た感じ玲王が何か言ったんだろうなと思いながら階段に座り込んだ。
ばちっ。
玲王と視線が交わる。コートの中心から階段までは距離があるが、彼が私に笑いかけていたことはよく分かった。伝わるかは置いといて、私は胸の前に置いていた手を握りこんで前に突き出した。
審判の試合開始の合図で青森駄々田の選手がボールを蹴った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!