電車に乗って
駅を降りて
小走りでもいいから急ぐ。
点滅する青い信号、、
まだ間に合う、、、!
ガシッ
掴まれている手の
強さと怒りを感じつつ
彼の思いが
彼の香りによって
伝わってくる。
信号が
もうすぐ
青に変わる。
変わった。
切なそうな
彼の表情。
掴まれていた腕に
じわじわとゆっくりと
痛みが走る。
青になると同時に走り出す。
私の足は止まらない。
結構遠い。
彼の会社について
受け付けに向かう。
出入口の自動ドアでさえ
開くのが遅くて
イライラする。
受話器を耳に当てて、
連絡をとる受付の人を待っていると
自動ドアから入ってきた。
女性と楽しそうに入ってきた。
しゅあ、、、
そんな笑顔で笑うんだね。
私も人の事言えないけど、
あなたも言えないね。
奥さんは私だっての。
いいな。
そっちも仲いいんだ。
泣くな。私。
彼に見つからないように、
会社を出た。
あの時、
ウォヌさんに止められているのを
ためらわず、
足を止めておけばよかったと
後悔。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。