第35話

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2019/04/06 04:54



この香り。


この姿。




ウォヌさんだ。






追いかけてくる男の人たちから
必死に逃げて、車に乗せられ


お花屋さんに向かった。



車の中は無言だった。

手は繋がれたままだった。


お店の中に入り、
たくさんの花に囲まれる中
椅子に座らされ、じっと見つめられる。


ウォヌ
ウォヌ
わかってないんですね、、
U
U
ごめんなさい、、
ウォヌ
ウォヌ
香りの特性を。
U
U
えっ?
いつもとちがう冷たい表情。

チクリと心臓に針が刺さっているみたい。
U
U
なんですか?
U
U
教えてください、、!
ウォヌ
ウォヌ
嬉しくなると、周りも嬉しくなるような香りがする。
あなたが怒ると香りが変わって、甘くはない香り。それがどんどん濃くなっていく。




そんなの知らなかった。


ウォヌ
ウォヌ
そして、あなたが自分を責めたり、罪悪感みたいなものでいっぱいになると、
ウォヌ
ウォヌ
香りはそれをカバーするように、
気付かれないように、
誰かに慰めて欲しいと、
今までより、深くて濃い、
ウォヌ
ウォヌ
あなたの心情によって
香りは変わるんです。
ウォヌ
ウォヌ
いつも同じではない。
U
U
そんな、、、
U
U
知らなかった、、。、




確かに、社長にキスされたとき。


「ドキドキすると変わるんだね」


記憶にある。




だからか。
しゅあも気付いてたんだ。
きっと。
ウォヌ
ウォヌ
でも、無理に元気でいる必要は無いんです。
あなたさんだって、色んなことを感じるでしょ?
ウォヌ
ウォヌ
楽しい、嬉しい、辛い、悲しい
ウォヌ
ウォヌ
みんな一緒なんです、
ただそれに香りがついているだけ。




彼は私の頭の上に

ポンポンッと優しく手を置いた。
U
U
いままで、、
どうして、、、


何も言わず
彼は抱きしめてくれた。


ぶわっと何かが込み上げて。


彼の香りに包まれた。


今のあなたの香りは
優しい。


でも少し甘いの。
ウォヌ
ウォヌ
辛いときは、そばにいるから




小さな声で言った後、




彼の香りはいっそう甘くなった。





わからないけど、





それを聞いた私の香りも



甘くなったと思う。






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