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それは、友達と焼き肉に行っていたある日の事。
「食べ放題3000円って鉄板だよな」
「しかも学割で更に500円引きとか、強すぎ……!」
「は~カルビめっちゃ食べたい」
「早く、凛花次のお肉焼いて~~」
とか何とか。口々に喋って。
クラブの仲良しメンバー男女5人位で食べに行ったんだっけ。
私も、お肉大好きだったから。
まさか、その時は食べられなくなるなんて思って無かったの。
「凛花は何が好きなの?」
「ん?私?フツーのお肉」
「お肉って、全部肉じゃん?」
「そうそう、種類だって」
「……何て言うか、ホルモンとか軟骨とかカルビとか、そういうのじゃなくて、柔らかくて癖の無いヤツっていうか」
「あ。そーいうことね」
「わかるわ」
そんなことを言われてたっけ。
食べ放題で、時間制限もあるからバンバン次のお肉は焼かなきゃだし、食べなきゃだし。
忙しくって。
でも美味しくって。皆と居られるのも嬉しかった。
……の筈、だったんだけどな。
「凛花、何か……様子、変だよ?」
隣に居た優菜に言われて。
私が自分が冷や汗が出てることに気付いた。
その時。私の頭の中は既に恐ろしい風景で占められていたから。
牛。が……
牛が視えていたの。
頭の中に。
でも、その牛は殺されてたーーーーーーーーーーー
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。