『私が“動物”を食べられなくなった日』
この苦しみが。
いつかは消えることを祈ってーーーーーーーーーーーーーー
*
「凜花」
私の名前を呼ぶ、声。
「今日も、食べないの……?」
「うん。いらない」
「じゃあね」
私は一言。ごちそうさま、だけ告げて食器を下げる。
洗い場の流しの横に、まだおかずが残ったままの食器を置くと、すたすたと階段を登った。
「凛花、凛花~っ」
ママが私のなまえを叫ぶ。
「もう、あの子ったらどうしちゃったのかしら」
ひそひそ、ママが弟の丈瑠に話しかける声が聞こえてくる。
いいの、いいの、気にしちゃダメなの。
部屋の扉を固く閉じて。
イヤホンは耳の中。
携帯の音楽プレーヤの音量を爆音に上げる。
――――――――――――――――――いつからだっけ。
涙。
わたし、が“お肉”を食べられなくなったの。
ねぇ?
*
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。