ダンス部が正式に活動を開始してから半年が経とうとしていた。
部活自体にも、友人関係にも慣れた頃。
私は、同じ部の仲間で特に気が合う、梨咲とご飯を食べに来ていた。
突然、手に握っていたコップを力強くテーブルに置き、身を乗り出してきた梨咲に
なんのことかわからないというふうに首を傾げる。
勿論、実際に梨咲が何のことを言っているかは分かっていなかったのだが、
梨咲はまるで私が隠し事をしている、と勘違いしたのか、少しふくれた顔をした。
……がしかし、そう言われても、分からないものは分からない。
私は、どうにかして梨咲の言っていることを理解しようと思い、頭を悩ませたが、
梨咲は痺れを切らしたように口を開いた。
…………え??
梨咲の言葉に、自分の中の時が止まった気がした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!