「神社の髪」
あなたの誕生日会で、楽しんでいた少女達の中に、窓の外を見ていた少女Aは思い出したかのように……
指指してる方向には、こちらからは木々に隠れてよく見えないがその先には神社がある。
あなたは相槌を打って話を聞いていた。
少女Aはこのあとも少し幽霊の髪の毛について話していたが、神社に幽霊の髪があるということ以外の情報は特に得られず、疑問に思ったようだ。
心の中で思っている間に話は変わり、消化不良のまま時は流れ、記憶の隅に追いやって忘れてしまったことだろう。
それから4年程の月日が流れ、あなたは学校の帰りにいつもは通り過ぎる神社に何となく気になって、足を踏み入れた。
お賽銭の所まで進んで目にしたものに思わず声が漏れたようだ。
あなたの視線の先には、髪の毛の束が釘で、拝殿に打ち込まれていた。
近づいてよく見てみると、40cm前後ぐらいの長さで、どの位置からまとめて切ったのか分からないが、この髪の持ち主は長髪なのが窺える。
細くてチリチリした髪質、白髪混じりの髪色、全体的見ると細かいウェーブのかかった濃いめの灰色の髪ような感じだ。
そのような状態の髪の持ち主で思い浮かぶのは老婆だろうか?
長年、悪い状態で保管されていたとしたら、綺麗なストレート髪もボロボロにはなると思うが、色も多少は変化すると思うが灰色になるほど変わることはあるのだろうか?
異様な光景に目を奪われて、まじまじと観察している内に友達からの噂話を思い出したようだ。
自宅から目と鼻の先とはいえ、住職や巫女のいない寂れた神社に入るのは唯一近所の住民が集う初詣ぐらいだ。
普段からお参りする人など殆どいないと思われる。
あなたも基本初詣だけ又はそれ以外で年1~2回行く時が極たまにあるだけだが、今までに髪の毛なんて見た事がなかったようだ。
良いものか悪いものかも分からない微かな感じた気配が気になりながらも、自宅へ帰っていった。
触らぬ髪に祟りなしといったところだろうか?
触っていたら何か起きたのだろうか……?
その後に神社に行っても髪の毛を見ることは1度もなく、打ち込まれていた痕もなかったらしい。
霊力のない人には基本視えないだけで、本当はずっとそこにあるのかもしれない。
幽霊の髪の毛が神社にあるというのは……
そういことなのかもしれない。
一体、誰の髪の毛だったのか……
何故、打ち付けられていたのか……
その場に見えない誰かが居たのだろうか?
髪の毛自体も誰にでも見えるものだったのだろうか?
友達はどこでその噂を聞いたのだろうか…
霊感のある者が視れば何かわかったのかもしれない……
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!