第11話

11歩目
286
2019/01/12 10:51
    私は、緊張からコップの中の水を一気に飲み干す。
隼人
なんで、俺まで……
木田遥斗
なんか、俺も緊張してきた
    私と隼人、遥斗は隣町のファミリーレストランに来ていた。今日は、遥斗と美緒が3年振りに会う約束の日。もうすぐ柳田と美緒が来るはずだ。
    壁側には遥斗が座り、私、隼人の順で座っている。周りから見れば少し微妙な空間が空けて座っているように見える。
由良
落ち着け私!大丈夫!私なら出来る!
    水を飲んでは呟き、また水を飲む。
隼人
俺、来る必要あったのか?
    落ち着かない様子の私を隼人は呆れた様に見つめている。
由良
だって、私一人だと緊張してうまく話せないし
隼人
だからって、俺じゃなくてもいいだろ?他の友人とかに頼めばいいだろ?
    隼人は頬杖をつく。
由良
だって、……から……
隼人
うん?なんだよ?
由良
だから、私にはお友達がいないの!
    思わず大きな声が出てしまう。
隼人が目を丸くする。

隼人
そんな、必死になるなよ。声も大きい。うるさい
由良
あ、ごめん……
    隼人が溜息を吐く。
隼人
今回だけだからな。俺が協力してやるのは
由良
うん。分かってるよ
由良
(初めて家族以外で、理解してくれた人なんだけどな。ちょっと、寂しいかも)
隼人
なんで、そんな顔するんだよ
    隼人がボソッと呟く。
由良
え?
隼人
なんでもない
茅野さんと柏木さんですか?
木田遥斗
美緒……
    眼鏡をかけた長身の真面目そうな、二十代後半ぐらいの男性。その隣に、細身の儚げな美人の二十代半ばの女性が私達の席に来た。
由良
柳田さんと美緒さんですか?
柳田昌浩
はい。柳田昌浩です。初めまして
    柳田が軽く会釈してくる。隼人が席を立ったのにならって私も立ちあがる。
隼人
柏木です
由良
茅野です
    2人で軽く会釈する。
風間美緒
風間美緒です
由良
(遥斗さんが好きになるのも納得。すごく、綺麗で上品な感じの人)
    私達は一旦席に座る。
    遥斗は真っ直ぐの美緒を見つめていた。
柳田昌浩
あの、何か頼みませんか?何も頼まないのは、アレなので
由良
あ、えっと、どうぞ!
    私はメニューを美緒と柳田に渡す。
風間美緒
ありがとうございます
    美緒が少し口元に笑みを浮かべる。
由良
柏木くんは何にする?
隼人
ホットコーヒー
    隼人はメニューを見ないで言う。
由良
ホットコーヒーね。遥斗さんは?
    私は何気なく遥斗に聞いた。
木田遥斗
え、いいよ俺は。飲めないからね
    遥斗は少し自虐的に笑う。
由良
でも、折角だから!遥斗さんも!
    私は遥斗の前にメニューを広げる。
木田遥斗
由良がそこまで言うなら。そうだな、俺はオレンジジュースで
由良
オレンジジュースですね!じゃあ、私はりんごジュースにします!
    目の前に座っている美緒が息を飲んだのが分かった。
風間美緒
本当に、そこに遥斗がいるんですね
    美緒の大きな瞳から涙が滲んでいる。
由良
はい
風間美緒
遥斗、オレンジジュース大好きなんです。子どもっぽいですよね
    美緒が泣き笑いのような表情をする。
木田遥斗
美緒……
    遥斗は手を伸ばして美緒の頬に触れる。美緒は気付かず、鞄の中からハンカチを取り出し涙を拭く。
    私はそんな2人が切なくて見ていられなかった。
柳田昌浩
美緒はいつもの紅茶にする?
    柳田は美緒を気遣うように言う。
風間美緒
うん。ありがとう
    柳田はベルを押して店員を呼び、テキパキと注文を伝えてる。
    少し気まずい沈黙が流れる。
由良
(どうしよう、何か話した方がいいよね)
風間美緒
お二人は学生さんだったんですね
由良
あ、はいっ!
    いきなりの美緒からの私は質問に慌てて答える。
風間美緒
高校生ですか?何年生?
由良
1年生です。柏木くんは同じクラスメイトなんです
風間美緒
クラスメイトなんですね。恋人同士なのかと思ってました
由良
い、いえ!柏木くんとはそういう関係じゃないです!柏木くんは私の御守りみたいな人なんです!
    隣に座っている隼人が無言で睨んでくる。
    私の慌てた様子に美緒が笑う。
風間美緒
由良さんって面白いですね
    美緒が笑ってくれたことに私は少し安堵した。

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