私は遥斗とちゃんと向き合って話すことを決めた。
鳥居から、10メートル程離れたところに遥斗がこちらを見つめて立っている。
私は遥斗の方を指差す。
隼人は面倒だとか、関わりたくないだの言ってはいたが結局私に付き合って一緒に来てくれた。
遥斗は民家の壁を突き抜けて消える。
隼人は家に戻ろうとする。
首筋に冷気を感じた。
私の隣に遥斗が立っている。
遥斗の口元がにやける。が、手で隠す。
少し照れるけど背に腹はかえられない、やるしかないんだ。
隼人は冷たくそう言うと家の方へ歩いていく。
私の目の前には崇人と香織、隼人が座る。私の右隣りには遥斗が座っている。遥斗の前には紅茶が置かれている。
隼人は私を無視して単刀直入に言っていく。
私を見つめる遥斗の眼差しは、とても優しかった。
遥斗が優しく私の頭を撫でてくる。頭に冷たく柔らかい感触が残る。
私は、そのまま伝える。
私のことではないのに、言葉にすると苦しくて悲しくて切なくて、目の奥が熱くなる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!