第7話

7歩目
319
2018/12/20 10:06
由良
(私は遥斗さんのことを勘違いしていたのかもしれない。本当はもっと……)
木田遥斗
三年も放っておいているくせに、今更別れの言葉なんて迷惑だていうのは分かっている
    私はつっかえながらも伝える。
隼人
じゃあ、あんたはどうしたいんだ?
木田遥斗
もう一度、会いたい。彼女に謝りたい。そして、幸せになって欲しいと伝えたい
    私の瞳から涙が溢れて零れ落ちる。
木田遥斗
ごめんね、由良。泣かないで
    遥斗が少し困った顔をする。
由良
いえ、私こそ、ごめんなさい……
由良
(しっかりしないと。私が泣いてどうするの!)
柏木香織
由良ちゃん、無理しないでね
由良
ありがとうございます。私は大丈夫です。遥斗さん、続けて下さい
    隼人が私の前にティッシュの箱を置く。
由良
ありがとう
    私はティッシュを貰い涙を拭う。
隼人
それで、あんたは彼女に会えたら成仏できるのか?
木田遥斗
たぶんね。俺の心残りは、彼女だけだから
     私は、遥斗の言い方に少し気になった。
隼人
じゃあ、茅野には用がないんだな?
由良
え?
隼人
何を驚いているんだ?
木田遥斗
うん。ごめんね、由良。由良に惹かれる何かがあるのは事実だけど、恋とは違うんだ
由良
(なんでだろう……なんか複雑な気持ち)
隼人
良かったな
由良
良かったのかな……?
    なんか、気が抜けてくる。
柏木崇人
話を戻そうか。遥斗くんの心残りは分かった。なら、次はどうやって解決するかだね
隼人
彼女の連絡先に連絡して、茅野が伝えてやればいいんじゃないか?
柏木香織
でも、一応遥斗くんは亡くなっているのよ?いきなり連絡して、彼女さん
信じてくれるかしら?
由良
そうですよね。そういえば、彼女さんって芸能人の方なんですか?
    私は、さつきから疑問に思っていたことを聞いた。
木田遥斗
違う。彼女は高校の時の同級生。名前は風間美緒
由良
じゃあ、美緒さんの連絡先は覚えていますか?
木田遥斗
覚えているよ
由良
紙に書くので、教えて下さい
    私は鞄の中から、メモとペンを取り出す。
木田遥斗
電話番号は-------------
でも、3年前だから変わっているかもしれない
由良
まずは連絡してみましょう?
柏木崇人
いや、ちょっと待って。いきなり、知らない女子高校生から電話きたら不審に思うよ
由良
確かに…… どうしよう
柏木崇人
うちから電話を掛けよう。神社名を言えばネットで調べられるし、安心感はあると思うから
由良
そうですね。お願いします
    香織が立ち上がって部屋を出た。パタパタとスリッパの音が聞こえる。
由良
なんて言えば信じてもらえるかなぁ
柏木崇人
遥斗くんと美緒さんだけが知っていることを言えばいいんじゃないかな?
由良
遥斗さん、何かありますか?
木田遥斗
美緒と出会った時のこととかならどうかな?
柏木香織
おまたせー。はい、これ電話どうぞ
由良
ありがとうございます
柏木崇人
僕がやろう
    崇人が電話を受け取り、美緒に電話を掛ける。みんなが固唾を呑む。
柏木崇人
あ、もしもし、
    思わず遥斗と目を合わす。遥斗は少し緊張したような顔をしてた。
柏木崇人
あ、
    プープープープー
その音から、崇人の言葉が続かなかった。
柏木崇人
現在は使われていないみたい。どうしようか
    遥斗の顔がわかりやすく沈んだ顔をする。
由良
ほ、他に!美緒さんの連絡先を知っている人はいないんですか!?
木田遥斗
美緒の連絡先を知っているのは……
いる!1人、絶対に知っている人間!
由良
誰ですか!?
木田遥斗
俺のマネージャー。柳田昌浩さん!その人だけには、美緒を紹介して連絡先も渡しておいた!
由良
じゃあ!その柳田さんに電話を掛けましょう!
   私は、遥斗から聞いた電話番号を崇人に伝える。
    電話の呼び出し音が聞こえる。
プルルルッ
プルルルッ
プルルルッ
柏木崇人
あ、もしもし私、月の森神社の宮司をしております柏木という者です。柳田昌浩さんのお電話でお間違えないでしょうか?
    崇人がスピーカーのボタンを押す。
柳田昌浩
はい。そうですが
    私は小さなガッツポーズをした。

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