蘭ちゃんが教室に行ってしまった。
はぁ…。
とため息をついてから歩き始めようとして気が付いた。
「山田くん…。」
目の前に山田くんが立っていた。
こうしてるだけでも、皆の視線がこちらに向いてるのが分かる。
「蘭ちゃんなら今、教室に行っ『あのさ。』
私の言葉に山田くんが被せてきた。
あれ?今の言葉…“素”だったよね?大丈夫かな?
「何?」
『桐山さん、放課後に何か用事ある?』
用事?何も無いけど…
「あるよ。」
『分かった。じゃあ、下駄箱の所で待ってるね。』
は?今、私は〝ある〟って言ったよね?
「いやいや、私は用事あ『嘘でしょ?』
またまた山田くんは私の言葉に被せてきた。
「何でそう思うの?」
『目を合わせないから。』
うっ。確かに。
私は嘘をつく時に、相手の目を見れないという癖がある。
『図星でしょ、桐山さん。』
なんで山田くんにバレるの…。
『じゃ、放課後にね。』
山田くんは表の顔の笑顔を見せ、手を振りながら教室に入っていった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。