「ごめん、お母さん。もう一回言って?」
『明日から、大ちゃんと登校して』
『何で!?』
私も思ったよ。ナイス秋人。
『大ちゃんの両親が、3ヶ月北海道に出張なのよ』
うん、多分ここからが本当の理由なんだろう。
『だからその間はこの家で生活する事になったのよ』
『「……………」』
もう、何から突っ込めば…。
『大貴は高3だろ?勉強の進み具合とか…』
『それなら大丈夫!』
さっきまで黙って話を聞いていた大ちゃんが言った。
「本当に?」
『おう!』
『大貴…何を根拠に言えんだよ』
『あら、2人共知らなかったっけ?』
何やら知っているような口ぶりのお母さん。
「何を?」
私は聞いた。
だって凄い気になるんだもん。
『俺さー、もう進路が決まってんだよ』
………………え?
「は、早くない!?」
今は7月。
まだ進路が決まっていない3年生が多く、うちの学校はピリピリしている人が多い。
『大貴の進路って?』
またもや私達は固まった。
今回は大ちゃんの言葉で…。
『俺、アイドルデビューするんだ!!』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。