無人の屋上に一人。
高さ1mもないくらいの低い柵を
怖さに震える足でなんとか跨ぐ。
どうしよう…今さらすごく怖い。
でも私はここから飛べば苦しまなくて済む。
大親友だったみおちんも亡くなって
友達だと思ってた雄也にも距離を置かれた。
私はこの2人が大好きなのに、
2人とも私の目の前から消えていった。
そう思うと心が軽くなって、飛び降りる決意が
どんどん固くなっていく。
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深呼吸をして全身の力を抜いた。
誰もいない屋上で一人呟き
飛び降りようとした時、
ガチャ ────
屋上の扉が開いて誰かが入ってくる
人影は…
にとても似てる人?だ。
そのまま気にせず飛び降りたら良いものの
足に力が入らなくなり、フラフラする。
フラフラしたせいで、体が後ろへと反り返った。
あ、私、雄也の目の前で死ねるんだ。
そう思って瞼を閉じた瞬間
ガシッ ────
誰かに左腕を捕まれ、私の体は
柵の内側へと引き戻された。
その瞬間、私は何故か気を失ってその場で
崩れ落ちてしまった。
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~ 気を失ってから30分後 ~
重たい瞼を持ち上げると
天井には青空…ではなく、ベージュ系の壁が
目に飛び込んできた。
気を失ってからの記憶がない私は
なぜここに居るのか分からない。
不安で仕方がなかった私は
ベットの上で寝転がりながら辺りを
キョロキョロしていると、
カーテンが数cm開いていることに気づいた。
恐る恐るその隙間から覗くと……?
顔も見たこともない謎の男がソファーでくつろいでいる。
完全に屋上に来た人は大好きな雄也だと思ってたのに…。
ソファーでくつろいでいた謎の男が私に
近づいてくる。
怖い…てか誰なの。
なんでコイツが私を心配してるの、
眉間にシワを寄せて、
心配してるのか怒ってるのか分からない顔で
私の顔を凝視してくる。
私は震える声でその謎の男に質問をした。
私の質問に答えず、どんどん質問してくるこの男。
少し苛立ってきた私は男を睨みつけながら言った。
少し動揺したのか、頭を ガシガシ かきながら
そっぽを向いてしまった。
モジモジ しながら私に伝えたあと、
颯爽とその場を離れ、ダッシュ で教室へと帰って行った。
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何…?何で アイツ が私を心配してるの?
" 待ってる…から。"
あの 有岡 という謎の男の言葉が
まだ、頭の中でリピートされる。
ねぇ、私って、あなたを頼っても良いのかな…?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。