第51話

おやすみ
265
2019/01/18 12:08
夜霧 真
…僕、頑張ります。
龍田 斗真
うん。…あ、そう言えば、真ちゃんに渡さないといけないものが…
夜霧 真
!…何ですか?それ……




















真がいなくなった俺は桐崎先生と若槻さんの援護をしていた。


もう空がオレンジから暗くなり始めた頃、その間、ずっと神崎さんと若槻さんは戦っている。
若槻 翔馬
い"っ…
踏み込んだ若槻さんが、足を捻ったのかバランスを崩す。そんな若槻さんに容赦なく刀を振り上げている神崎さん。
それでも、若槻さんが近距離で放った弾丸は神崎さんの手首に命中し、刀を落とした。


それを見た桐崎先生は刀を蹴り飛ばすと、若槻さんに肩を貸す。
桐崎先生
一旦、退散です。
俺達は1つの家に入ると、玄関に座った。
若槻 翔馬
ん?誰かいるのか?
三浦 友哉
明かりがついてる…。
そう若槻さんが呟いた途端…
夜霧 真
ああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!
光が漏れている部屋から、聞こえた悲鳴に近い真の叫び声。
叫び声が聞こえた瞬間、暑くなった気がした。
光が漏れていた扉が開き、人が出てくる。
白い髪先が炎のように揺らめく。
少し太めの鞘に収まった刀を手に持っていた。
夜霧 真
……。
こちらを見る真。
何かを察したのか、若槻さんが玄関の扉を開けた。
トン…ッ……
たった1回の床を蹴る音。
真がいた場所には小さな炎が燃えている。
三浦 友哉
どうしたんだ…




















心臓が燃えるように熱い。
体や髪から火の粉が舞っている。
夜霧 真
はぁぁ…
痛いけど、温かくて、清々しい。
神崎 舞
……。
夜霧 真
いた…
僕の踏む場所に炎の足跡がつく。
鞘の先で舞の鳩尾を突こうとしたが、かわされる。
何回も何回も剣を振り、舞に攻撃を加える。
でも、全てかわされる。
あぁ、これは駄目だ。
そう僕は悟った。
舞は美しい。
僕は汚い。
舞は強い。
僕は弱い。
全て分かっていたこと。
世界の英雄なんて言われているけど、舞にも生きて欲しいと願った人達。


こんな命令がきてどう思ったのだろう?


静かに眠りについたはずの舞が、ロボットとして、クローンして、目の前に現れた。
どんな、気持ちなんだろう?
悲しい?それとも、嬉しい?
でも、命令は舞を殺せ。
それなら、悲しいに決まっている。


静かに眠りについたのに起こされて、日本中の人達に追いかけられ、殺し合い。


1番は…舞が望んでいないこと。
舞が望まないなら、きっと正解じゃない。
だけど、拓海から見ると正解なのかもしれない。
それは人それぞれ。
神崎 舞
っ…
振り上げた僕の足が、火の弧を描く。
炎に少し下がった舞の肩を僕は掴んだ。
夜霧 真
…舞。
神崎 舞
何?
そう答えた舞は何かを求める目をしていた。
夜霧 真
おやすみ。
そう一筋の涙を流しながら僕は、笑う。
僕も巻き込むような盛大な自爆。
全てを焼き尽くすように、痛みを感じる前に寝れるように。
目の前が紅い炎しか見えなくなる。
そして、全ての幕を降ろしたのだった……

プリ小説オーディオドラマ