第52話

✡5年
268
2019/01/18 22:50
『服従確認』
確かにメールは届き、DEATH GAMEは終わった。
確かに、確かに終わったけど…
その日を境に俺の幼馴染、真は姿を消した。
あの日は外で巨大な火柱が立っていた。
そのことが気になる。
もし、真がやったことなら真自身も一緒に…
三浦 友哉
……。
鹿島 瑚子
友哉、暗い顔しないでよ。あれから何年が経ったと思ってるの。
三浦 友哉
5年…
鹿島 瑚子
まぁ、そうだけどさ…
俺の向かいの席に座る瑚子が何とも言えないような表情を浮かべる。
鹿島 瑚子
きっと何処かにいるよ。
三浦 友哉
そう信じたいけど…
鹿島 瑚子
なら、それでいいの。
瑚子がそう言い、話を切る。
沢山の犠牲と被害が出た日本は5年が経った今でも壊れた建物が転がっている地域が多い。
復旧作業や破損物撤去にも人手がいるから、凄い時間がかかることとなっていた。
だけど、少しずつ元の形を取り戻しつつある。
国内での生産が大幅に下がったことから、海外から輸入したものでもちゃんと金を持っている人しか買うことが出来ず、金を持っていない人は貧しい生活を送っていた。
近頃、世界のあちらこちらで奇跡や感謝の声が多いらしい。
戦争があった地域は終戦し、怪我人は何もなかったかのように元気になり、日照時間が短くて作物が育たない地域に太陽が差したり、貧しい生活を送っている村に食糧を分け与えたり……
不思議なことが続いている。
大人になった俺達。
そんなよく分からない日々を過ごしている。
夜になり、自分の家に向かう。
家に入ると、リビングで茜がテレビを見ていた。
お邪魔してまーす。
三浦 友哉
茜…どうやって入ったんだよ。
お母さんから合鍵借りたの。
三浦 友哉
何の用だ?
ずっと落ち込んでいるお兄ちゃんに良い情報を教えてあげようと思って。
三浦 友哉
良い情報?
リビングでパソコンを開く茜を横目に見ながら、俺は荷物を置く。
そう。これ見て。
そう言い、俺に見せたのは全国の人と繋がることが出来るトークアプリ。
そこには…
「狐のお面を付けた男女がいた!」
「俺も見た。」
「私が見た時は空からお金を投げてたよ!」
「何か壊れた建物が多い地域で見た人が多いみたいだよ。」
いろんな県からのコメントがずらりと並ぶ。
どう?ここにはまだ来てないけど、もし書き込みが本当で来るなら今晩。
三浦 友哉
何で?
え、今日のニュース見てないの?今日は3年に1度の……
そこまで言ったところでテレビの内容が変わった。
『速報です。本日未明、狐の面を付けた男女が出現し、大量の現金を投げるという不思議な光景が全国各地で目撃されています。』


『尚、その狐の面を付けた男女は5年前に全国に大きな被害をもたらしたDEATH GAMEの命令に出てきた者と同一人物と思われます。現在は福岡県にいるということで、現場と中継が繋がっています。田中さーん。』
『はい!変わりました!』
スタジオから外へと画面が切り替わる。
アナウンサーの後ろには1万円札が降っているのが分かる。


歓喜の声を上げ、人々がそれを拾う。
『ただいま、私は桜華町にいます!見てください!私の後ろには大量の1万円札が降ってきています!見えますでしょうか?つい先程から全国各地で目撃されている狐のお面を付けた男女が空から投げています!』
カメラが空中に向く。
狐の面の男女が建物の上を飛び移り、持っていた袋を逆さにして中身を落としていた。
『こんな大量の現金がどこから出てきたかを我々で調べた結果、世界の貧しい国々や戦争が多い地域で作物を育てたり、戦争を終わらせたりして感謝として貰った現金ではないかと考えられます!』
『現場からは以上です!』
『ありがとうございました。』
三浦 友哉
……マジか。
マジだね。
三浦 友哉
ちょっと外に行ってくる。
行ってらっしゃい。
そうリビングを出ようとした時だった。
コンコン…
窓がノックされる。
茜がカーテンを開けると、赤い光が差し込む。

そして、狐のお面を付けた女性と大きな袋を背負う女性よりも大きな獣がいた。
そして、女性はお面を外す。
夜霧 真
友哉、久しぶり。
三浦 友哉
真…
真の右目辺りには火傷のあとが残っている。
でも、昔と変わらない雰囲気があった。
夜霧 真
いやぁ、久しぶりに日本に戻ってきたけど、相変わらず酷いね。
三浦 友哉
まぁ、そうだな。
夜霧 真
傷ついた日本なんて僕は嫌いだよ。
外の方を向くと、真が腕を前に出す。
夜霧 真
全てが戻りますように。
そう呟いたと同時に俺はテレビを見て、驚いた。
壊れて瓦礫となった建物が浮き、みるみるうちに元の形に戻っていく。
テレビに映る建物が完全に原型を取り戻したとき、真が「次に行かなきゃ」と言う。
三浦 友哉
真!
夜霧 真
ん?
三浦 友哉
それが終わったらどうするんだ?
夜霧 真
そうだね…友哉と一緒にいようかな?
三浦 友哉
え?
意味を理解するまでに時間がかかる俺。
そんな俺を見て、真はクスクスと笑うと…
夜霧 真
それじゃ、みー君。また今度!
満面の笑みでそう言うと、真は狐のお面を付けて、次の場所へと向かったのだった。

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