世界はとても広い。
そう知ったのは、母さんがいろんなところに連れて行ってくれたから。
まだまだ知らない世界があるんだ!
そんなことをいつも思っていた。
寒い冬が終わり春になったある日、お母さんと一緒に山の中にあるという村に向かった。
名前は無い、”名無し村”なんだったって。
村の入口にはお母さんと同じくらいの女性が立っていた。
そう言い、藍川さんはお辞儀した。
お母さんの問いに藍川さんが少し眉を下げ、悲しそうな顔をする。
お母さんから絆創膏と湿布を貰うと、村にある広場へ。
外に建てられた黒い部屋みたいのが見える。
すると、そこから男の人達が出てきた。
扉を開け、中を覗く。
濃い血の匂いが鼻を突く。
中は真っ暗で、何があるかが確認できるくらいで、細かいところまでは観察出来ない。
部屋の中には檻があった。
そして、その檻の中には手首を鎖で繋がれて横たわっている同じくらいの子。
暗くても日焼けをしてない白い肌に血が滲んでいるのは分かった。
少し怖くなってその場に絆創膏と湿布だけを置いてスグにその部屋から出た。
夜、お母さんに呼ばれると、向かいの椅子に座るように言われた。
そう言って、お母さんとの話は終了した。
次の日、再びお母さんに絆創膏と湿布を渡されて、宿を出る。
昨日のように血の匂いが鼻を突く部屋。
今日は逃げ出さずに、こう言った。
って……
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。