第48話

✡車
245
2019/01/10 13:19
結局、真が速すぎてスグに見失った俺は暁月さんと琥珀に案内してもらってDEATH GAMEが初めて開催された五十嵐村へと向かった。


去年、瑚子に案内された時は電車でも1時間半くらいは揺らされた覚えがあった。


もちろん、今は電車が動いてない。


つまり…1時間半かかる道のりを歩きだ。
三浦 友哉
これってどんくらいかかる?
火ノ神 琥珀
ん〜、俺だけだと30分くらいなんで…軽く4時間くらいかな。
三浦 友哉
よ、4時間…。
暁月 璃紅
私担いだみたいに三浦君を担いで急ぐことは出来ないの?
火ノ神 琥珀
流石にきつい。女子は男に比べると軽いから建物の上を移動できるけど、男は無理無理。
桐崎先生
車を出しましょうか?
いつの間にか後ろに立っていた桐崎先生が言った。
隣には若槻さんもいる。
三浦 友哉
え、いいんですか?
若槻 翔馬
おい、美歌。お前は何言ってる。ただの自動車であの村まで行けば、普通に2時間はかかるぞ。
桐崎先生
じゃあ、貴方が出してください。
若槻 翔馬
別にいいけど…絶対に吐くことになると思うぞ。その分、早いけどな。
「どうする?」と俺を見ながら聞いてくる。
三浦 友哉
じゃあ、お願いします!
若槻 翔馬
分かった。ついてこい。
暁月 璃紅
あ、私も…
火ノ神 琥珀
じゃ、俺は先に行ってる。
そう言い、琥珀は建物に飛び乗り見えなくなった。
10分くらい歩いたところで、「ちょっと待ってろ」と言って、若槻さんが家の中に入って、車の鍵を取ると、ガレージを開け始めた。
すると、桐崎先生が小声で俺達に…
桐崎先生
二人とも、本っ当に気を付けて乗ってください。取り敢えず、近くの物に捕まらないと絶対に痣が出来ます。
三浦 友哉
え…
暁月 璃紅
そ、そんなに運転が下手なんですか?
桐崎先生
下手じゃないんですが…翔馬の車が問題ありすぎて酔います…。私も何回か乗らされたことがありますが、本当に気持ち悪かったです…。
溜息混じりに桐崎先生が呟いたところで、ガレージから1台の車が出てきた。
見た目は普通だけどな…。
若槻 翔馬
ほら、早く。
助手席には荷物が置いてあったため、後ろに乗ることになった。真ん中に暁月さんでその隣に俺と桐崎先生。
桐崎先生
翔馬。安全運転ですよ?
若槻 翔馬
いっつも安全だっつーの。
エンジンをかけると、アクセルを踏む前に何かカーナビのパネルをいじり始めた。
若槻 翔馬
友哉。琥珀は30分で五十嵐村まで着くって言ってたか?
三浦 友哉
は、はい!
若槻 翔馬
その半分で着いてやる。
パネルに「上限解放しますか?」と書かれていた。
若槻さんが「はい」を押す。
若槻 翔馬
じゃあ、出発。
そう言い、アクセルを踏んだ瞬間、体が背もたれに思いっきりぶつかる。
横の手すりに掴まり、横目で隣を見ると、暁月さんは桐崎先生の腕にしがみつき、桐崎先生はただただ無言で遠くを見ていた。
横を見ると、どんどん景色が後ろへと流れている。
三浦 友哉
桐崎先生…若槻さんの職業って…?
桐崎先生
翔馬は…科学者兼発明家です…。
ほら、藍川さんのトランプもこの人が作ったでしょう…。
三浦 友哉
そう言えば…
桐崎先生
この車も改造されてます…。普通なら180kmが限界なのを翔馬は300kmまで出せるようにしたんです…。だから、この車はそんなスピードでも周りがちゃんと見える翔馬にしか運転出来ないんですよ…。
かなりの揺れに酔ってきたのか、桐崎先生が少し顔を青くしながら答えてくれる。
そして、揺れに我慢すること15分。
三浦 友哉
本当に着いた…。
山奥の「五十嵐村」と刻まれた看板の前に車が停止すると、俺は風景がとてもゆっくり動いているように見えていた…。

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