結局、真が速すぎてスグに見失った俺は暁月さんと琥珀に案内してもらってDEATH GAMEが初めて開催された五十嵐村へと向かった。
去年、瑚子に案内された時は電車でも1時間半くらいは揺らされた覚えがあった。
もちろん、今は電車が動いてない。
つまり…1時間半かかる道のりを歩きだ。
いつの間にか後ろに立っていた桐崎先生が言った。
隣には若槻さんもいる。
「どうする?」と俺を見ながら聞いてくる。
そう言い、琥珀は建物に飛び乗り見えなくなった。
10分くらい歩いたところで、「ちょっと待ってろ」と言って、若槻さんが家の中に入って、車の鍵を取ると、ガレージを開け始めた。
すると、桐崎先生が小声で俺達に…
溜息混じりに桐崎先生が呟いたところで、ガレージから1台の車が出てきた。
見た目は普通だけどな…。
助手席には荷物が置いてあったため、後ろに乗ることになった。真ん中に暁月さんでその隣に俺と桐崎先生。
エンジンをかけると、アクセルを踏む前に何かカーナビのパネルをいじり始めた。
パネルに「上限解放しますか?」と書かれていた。
若槻さんが「はい」を押す。
そう言い、アクセルを踏んだ瞬間、体が背もたれに思いっきりぶつかる。
横の手すりに掴まり、横目で隣を見ると、暁月さんは桐崎先生の腕にしがみつき、桐崎先生はただただ無言で遠くを見ていた。
横を見ると、どんどん景色が後ろへと流れている。
かなりの揺れに酔ってきたのか、桐崎先生が少し顔を青くしながら答えてくれる。
そして、揺れに我慢すること15分。
山奥の「五十嵐村」と刻まれた看板の前に車が停止すると、俺は風景がとてもゆっくり動いているように見えていた…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。