第27話

予定 sideユズ
231
2018/12/28 01:31
近付いて分かった。
君の目からは…死にたいって願望がある。
そんなのダメ……こんな狭い世界だけを見て、そんなことを思ったらいけない!
だから、手当をして、味方がいることを伝える。
そんな時の君は表情はあまり変わらなかったけど、目は少し輝いていて…そして……
…生きたいって願う”匂い”がしたんだ……。



















明神 柚輝
いつになったら気付くのやら…。
そんなことを俺は寝ている真を見て呟く。
ちゃんと俺の記憶に残っている。
君が酷い生活を強いられていたこと。
君がゴミのように扱われていたこと。
まだ親の顔さえも知らなかったこと。
まぁ、無理もないか。
あの時は今よりも髪が長かったし、名前からしてもあの見た目でユズだと間違えるよな…。
チーム分けのとき、最初は真があの”名無し村”の子だとは分からなかった。
ただ伏せていて、壇上に立った人の匂いが全く無いから気になった。それだけ。
でも、君は君だった。
何事にも流されずに、自分の正しいと思ったことを実行する。
俺がつけた「真」って名前みたいに…
外を見ると、ほぼ満ちた月が浮かんでいた。
次に紅い満月が浮かべば、君は人間じゃなくなる。
でも、君の意思次第で紅い満月を見なければ、普通の君でいられる。
選ぶのは…君だ。
18歳が人間と化け物の変わり目。
6回目の紅い満月の時にその夜霧家の中でも選ばれた者は選択しないといけない。
確か…1回も紅い満月は見ていなかったっけ?
暁月 璃紅
失礼します。
部屋に入ってきた璃紅の手は二人分の夕食を持っていた。
明神 柚輝
ありがとう。
暁月 璃紅
いえいえ、とんでもないです。
机の上にご飯を置くと、いつも当たり前かのように寝ている真に毛布をかける。
すると、ポツリと…
暁月 璃紅
……柚輝様も真様も何処か様子が変わりましたね。
明神 柚輝
そうかな?
暁月 璃紅
はい。あの幼い頃に比べてそれぞれの意思がある立派な方になられたと思います。
明神 柚輝
きっと…真も広い世界を知ったから変われたんだと思うよ。
暁月 璃紅
広い世界、ですか?
明神 柚輝
うん。この世界は広いよ。広いからこそ知らないことだらけでそれらを見てみたくなるんだ。
暁月 璃紅
それは楽しそうですね。
微かな笑みを浮かべ、璃紅は話す。
すると、廊下からドタバタと慌てた足音が聞こえたかと思うと…
明神 柚輝
ん?
暁月 朱雀
おい!璃紅!!
暁月 璃紅
お兄ちゃん、うるさいです!
暁月 朱雀
あ、あぁ、それより大変なんだ。
暁月 璃紅
何が?
手にしているスマホを見ながら、焦りの匂いを漂わす朱雀がこう言った。
暁月 朱雀
今すぐここから真を逃がせ。
明神 柚輝
どうして?
暁月 朱雀
これを見てくれ。
そう言うと、朱雀が俺と璃紅に持っていたスマホの画面を見せてくれた。
一斉送信予定日時:09/08 00:00

To:GM
title:Return
※全国の中学生から29歳の人が対象です
※24時間以内に命令に従いなさい
※命令に背いた場合には罰を与えます

命令:狐面の男女と夜霧真を殺せ。殺せなかった場合には逃した1人につき、5000人に罰を与える。
明神 柚輝
おいおい、マジかよ…
暁月 朱雀
柚輝なら狐面を外しとけばバレない。だけど、真は完全に名前とおまけに指名手配で写真まで公開されている。
暁月 璃紅
今日の命令が異常に簡単だと思いましたが、やっぱり裏がありましたか…
暁月 朱雀
10年前にあったDEATH GAMEだと経験者1人につき2000人の命がかけられた。今回は1人につき5000人。柚輝と真で死ぬのは10000人。となると、国もお前らを探すことになる。
暁月 璃紅
真様をどう隠すですかね…
暁月 朱雀
取り敢えず、柚輝は髪を結んで帽子の中に隠しとけ。今のところで公開されていたあの動画だと少し跳ねた白髪の男っていうのが特徴だ。
明神 柚輝
顔はバレてないし、髪は仮染めで黒だから隠せば問題無いってことか。
暁月 朱雀
そう。琥珀には伝えた。
明神 柚輝
ありがとう。
そして、真を軽く揺らす。
夜霧 真
ん〜…
真の少し瞼が開き、俺を見る。
……少し悲しそうな匂いがして何故か、その目には涙が溜まっているように見えた。
明神 柚輝
真。外に行こう。
それを聞き、じっと俺の顔を見た真は…
夜霧 真
ユズ〜…。いつか広い世界を僕にも、見せて、ね……
そう言うとまた寝てしまった。


今のは意識があるのか…寝言か……。でも…
明神 柚輝
……まだ君は狭い世界にいるのか…
朱雀と璃紅に聞こえるか聞こえないくらいの声でそう呟くと、俺は真を背負い外へ向かった…。

プリ小説オーディオドラマ