月日が流れ、土が再び庭を覆い尽くしました。
更に月日が流れ、庭を埋め尽くしたのは野花でした。
しかし、どんなに月日が流れても、人が住み着くことはありませんでした。
静かに狂う家庭があった事実を知った上で、住みたい奇特な方はまずいないことでしょう。
とはいえ、長い年月を経て、その事実を知る者は誰一人残っていません。
ですが、庭を埋めた野花が再開発を上手く阻止し続けていました。
この場所で二度と無機質に葬り去られることにより生じる悲劇を繰り返さないために、歴史を告白せずとも野花が美しく咲き誇ることで阻止する様ほど皮肉なものはないでしょう。
そして、これほど美しく粋な告白もまたとないことでしょう。
【end.】
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。