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葵「 え?」
『 …やっぱなんでもない 』
何にもなかったかのように部屋に向かう彼女
不意に見えた耳は見たことない位赤くて
ふらふら歩く彼女を抱き上げた
いわゆるお姫様抱っこってやつ
『 え 、ちょっ… 』
葵「 軽っ 、」
『 ねぇ 、ちょっと 、下ろして…… 』
葵「 うるさいなあ 、病人は大人しくしてろ 」
『 …… 』
黙り込んでしまった彼女に焦りを感じたその時
『 ………ありがとう 、』
聞こえるか聞こえないか位の小さな小さな声だったけど
確かに彼女が呟いたその言葉は俺の耳にちゃんと届いた
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!