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プロローグ
ーーー「おいで!」
私は素直に呼ばれた方へ向かう。
「なぁに?」
この頃はまだ、幸せだった。
私が「持っていた」秘密も知らずに。
「あーっ、好きだよっー!」
あぁ。心が痛いくらいに嬉しい。
「ありがとう、私も大好きだよっ」
私は、人から愛されるような子供じゃなかったから...。
人から愛されることは嬉しいんだってこと、
この時に初めて知った。ーーー
今思えば人に愛されることは、
好かれることは、奇跡だと思う。
付き合ってることなんて、奇跡以上に奇跡だ。
今、もしあなたに付き合っている人がいるのなら、
人に愛されることは当たり前じゃないんだって、
幸せな時間ほどすぐ「消えて逝く」んだって、覚えておいてほしい。
これは、私の絶望の物語。
私の「傷」は永遠に消えない。癒えない。
「...人って不幸よね。
人を愛してしまうのだから。
愛なんて、幸せなんて知らない方が
案外生きやすかったかもしれないのに...。」
静かな世界でひとり、私は呟いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。