何度も攻撃をしたが、王は平然としていた。
王に傷をつけることが出来るのはほんの一瞬だけ。
すぐに傷は修復してしまうのだ。
これじゃ、切りがない。
私はどうやったら大きいダメージを付けることが出来るかと考えながらも、攻撃を止めないように気をつけた。
ダメージを与えることが出来なくても、隙は作らないようにしないといけない。
魔法はダメ、普通に攻撃しても意味が無い……。
他の攻撃方法は……分からない。
傷が修復しなければ…。
そうだ!
傷を修復する時間を与えなければいいんだ!
でも、これ以上は攻撃のスピードは上げることができない。
そうか、この物語を終わらせるには……
あれを使うしかないのか。
『何だ?もう終わりか?』
王が喋っている。
『うるさい……』
私は戦いの途中で周りの音を聞こえるようにしていた。
『そろそろ秘密兵器を出すか……。お前のために用意したんだ!喜べ!』
その時、王の周りを白い煙が囲んだ。
私は白い煙から何か出てくるのかと思い、警戒をした。
数分して、白い煙は消えていった。
『えっ……』
私は目の前の光景に驚いた。
『嬉しいだろう?お前が今から戦う相手は琉と結愛だ!琉、結愛、目の前にいる敵を全て殺せ!』
王がそう言うと、琉と結愛が私に向かってきた。
『私は……私は琉と結愛とは戦わない!王、お前を倒すだけだ!』
一瞬、私の目の前には絶望しかなかった。
でも、私はそれを乗り越えた。
琉と結愛がこの場所に、私の目の前に居る!
最後の時は三人で過ごすことが出来るんだ……。
そう考えたから。
『琉、結愛、今までありがとう。生まれ変わっても絶対忘れないよ……』
琉と結愛を通り過ぎる時に言った。
その後、私は王の目の前まで行った。
私が王に攻撃した瞬間、王はある人を盾にした。
『少しは役に立ったな、お前の母親』
王が盾にした人物、それは私のお母さんだった……。
私は気付くのが遅く、私が放った魔法はお母さんに直撃してしまった。
『王!よくも……!いや、もういいか……。王、最後に聞かせろ!たくさん人は居るのに、何で私にこだわるんだ?』
私の最後に王へ聞いた。
一番気になっていた事なんだ。
『答えてやろう!お前以外にも候補はいた。合計で二人いた。一度は我が国へ招待した。でもな、二人ともつまらなかった。だから廃棄した。』
『今、その二人はどこに居るんだ?』
私はもう一度だけ聞いた。
廃棄って何だよ。
人をモノ扱いすんな!
『いくら探しても見つからないだろうな!』
王は表情を変えずに言った。
『殺したってことか?つまらないから…そんな理由だけで殺したのかよ!』
『そうだ!何か文句あるか?』
『じゃあ、こっちも言わせてもらう!お前が一番いらないんだよ!』
私はそう言うと、消えた。
透明になったのだ。
私は、琉と結愛を倒した。
楽にしてあげた。
苦しそうだったから。
もう迷わないよ。
私は、この思いを一生忘れない。
死んでも忘れない。
ずっと、ずっと……。
そうして、私は王の背後へ移動して抱きしめた。
『もう終わらせよう……』
私は王と私だけに聞こえるよう言った。
ドーーーンッ!!!
大きい音を立てて爆発した。
私の秘密の魔法。
誰にも教えてない。
私にしか使えない魔法。
スタンゲスト・ダスト
この魔法は私を中心とした三キロメートルの範囲に居る人、建物を一欠片も無く消すことが出来る。
この魔法での傷は修復出来ない。
一瞬で全てが消えてしまうのだから。
それが物ではなく、人でも簡単に消えてしまう。
そして、自分自身も。
王が消えると同時に私も消えてしまう。
でも、もう良いんだ!
もういい……。
その時、さなの姿が私の瞳に映った。
『さな……ずっと信じてたよ ……』
私は小さく呟いた。
そして、王と私は消え去った。
一欠片も無く、消えてしまった。
この出来事は絶対に忘れない。
生まれ変わっても絶対に……。
その思いを強く抱えて、私は消え去ったのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。