第52話

毒矢
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2018/07/02 11:46
いつの間にか、暖かい透明なものが流れていた。










それを見た、琉は私に声を掛けてきた。











『大丈夫か?』










震えているのに、手を差し出してくれてる。











やっぱ、琉は優しい。







それは、変わってないんだ。






良かった…。





『ありがとう。』







そう言ったが、私が琉の手を取ることは無かった。











無理しなくていいよ。







怖いなら、怖がればいい。








怖がって、離れてくれた方が、いっそ楽なんじゃないか。










そう私は、思ってしまった。








私が今やってることは、最低だって分かっているよ。











だって、見捨てるってことでしょ。












でも、もう巻き込みたくないんだ。













ごめん、琉。








本心じゃない。








けど、これはしょうがないことなんだよ。






『琉、死にたい?生きたい?生きたいなら、十秒以内にココの教室から出てって。死にたいなら、残って。』










きっと、出てくはず。











九、八、七、六…。











まだ行かないのか?











早く行って、お願い。










殺したくないからさ。










『0。あと、五秒足すから早く逃げなよ。』











私はそう言った。









行ってほしい。











『行かない。気付いてないのか?涙さっきからずっと止まらない。ほっとけない。』







気づかなかった。





何で、そんなとこまで見てんの。












気づかなくてよかったのに。











一人になりたい。











そうすれば、楽になるような気がするから。







だから、私は、言ったんだ。





『行って!殺すよ?』









『別にいいよ。』












即答だった。











そんなこと言いながら、震えているくせに。












そして、その時、琉が言った。









『楽になりたいだけでしょ?』










何で、そんなことまで分かるの?







そして、琉がまた言ってきた。




『諦めちゃっていいのか?』











私は、琉から言われたその一言が心に刺さった。













そうだよね。











何で諦めようとしてたんだろう。











何で、琉を見捨てようとしてしまったのだろう。













そんなことしたら、後で後悔するって知ってたのに。













それに、今、記憶が無くなる前の琉と話しているみたいだった。











琉が琉であることは変わってないんだ。










記憶が無くなったなら、これから、また、作っていけばいいんだ。











よし決めた!










もう諦めない。












何があっても、絶対諦めない。







私は、決心した顔つきで琉に言った。



















『そうだよね。私、諦めない!君の名前は、琉、これからよろしく!改めて、琉、仲間になってください!』







琉は驚いていた。







返事が怖い。









『琉…。いい名前だな!怖がってて、ごめん。もう怖くないや。こちらこそよろしくな!』









琉の震えは、いつの間にか止まっていた。










それに、笑っていた。










それに、つられて私も笑っていた。












でも、こうやって笑っていられるのも、今だけだ。












いつか、一瞬で壊れてしまうんだ。










それを防ぐ方法は、強くなること。








それだけだ。






もう壊れるのか?




もう来てしまった。











『魔女さん!仲間になれよ!』










さっき、倒した奴の仲間か。









今度は、数が多い。











『ならない!』





私はそう言った。





なった方が楽かもしれない。








でも、ならない。









楽にならなくたっていい。















諦めない方を私は選ぶ!













『じゃあ、知らねぇぞ?バーン!』








敵はそう言って笑った。









『うっ!』











腕に矢が刺さった。








ふらつく。











毒矢か。










でも、負けない。








魔法で毒が全身にまわるのを遅くした。












『ずるい手だね。でも、こんなのなんて事ない。』











動けなくなるまで、三分程か。










それまでに倒そう。












『琉、下がってて。』











『分かった。』



素直に言う事を聞いてくれた。








ありがとう。






私は、心の中でそう呟いた。






琉がこいつらを倒すのは、難しい。






魔法を使うから。





だから、私が倒さなきゃ。




私しか倒せないんだ。





最後まで諦めない。









時間内に倒してやる。

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