第16話

あれから三日…
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2018/03/25 04:19
お姉ちゃん(柚)
…恋、調子はどう?
エプロン姿のお姉ちゃんは、部屋に入ってきてベッドから少し離れた場所で聞いてきた。
恋
…まだ悪いかも
お姉ちゃん(柚)
そう…じゃあ、今日も学校休む?
恋
…ん、そうする
お姉ちゃん(柚)
…うん。わかった
静かなお姉ちゃんの声。いつもは調子乗りでわたし達がするような子供の話にも乗ってくるお姉ちゃんでも、家族の誰かが倒れた時には真剣そのものになる。
お姉ちゃんにはわるいけど、なんかへんな感じ…

あれからわたしは、三日間、ずっと学校を休んでいる。
千江…ましてや大河くんと合わせる顔なんてない。
あんなこと言ったあとでどう謝って償えばいいんだよ…
そう考えると、またわたしの目の前が滲む。
ギュッと目を瞑ってかろうじて涙が溢れ落ちるのを防いだ。
恋
…はぁ…
…あーダメだダメだ!
そんなしょげてちゃ、お笑い要素がなくなっちゃう!と、その時だった…
グーッ……ギュルル…
…う。
その音を聞いた瞬間、わたしは一人で真っ赤になった。
は、恥ずかしい…
コラッ!わたしのお腹!読者の皆さんにわたしの女の子キャラを崩壊させてどうすんのよ!
…でも、よく考えたら、ここ三日間、十分な食事を取ってないなぁ…
よし!なんか食ーべよと決めたわたしは、部屋を出て下に行き、冷蔵庫から適当なものを…
???
…恋
恋
ひゃっ!
え、誰?だれ?
あたりを咄嗟に見回してみると…壁にもたれかかって腕組みをしているお姉ちゃんがいた。
恋
あ、お、お姉ちゃん…
お姉ちゃん(柚)
…恋、元気そうね
ギクッ!
恋
…うん…ちょっとマシになったかも…
少し声を病人っぽくする。
演劇部所属のわたしとしては、これぐらい簡単簡単!
お姉ちゃん(柚)
うそでしょ?
ギクッ!

こ、声を病人っぽくし過ぎた?
お姉ちゃん(柚)
ほんとはあなた、病気なんかじゃないでしょう?
恋
…へ?
え?そう意味でのうそ?
お姉ちゃん(柚)
十年ぐらい過ごしてるんですもの。それぐらいわかるわよ。
恋
…………
さすがお姉ちゃん。子供を見る観察眼はすごいね。
お姉ちゃん(柚)
はぁ…やっぱりね。で、ほんとはどういう理由?
それは…
と、わたしが口にしようとしたその時わたしは一つ気づいた。
恋
え…ちょっと待って。
お姉ちゃん(柚)
何?
恋
わたし、はっきりとズル休みしたとは言ってないよね?なんで納得したの?
お姉ちゃん(柚)
っ?!
今度はお姉ちゃんがギクリとする番。
目をそらすお姉ちゃんだけど、わたしは視線を逸らさない。
お姉ちゃん(柚)
…はあ、いいわ、教えてあげる。もうそろそろ教えどきかと思ったからね…
恋
…?
教えてくれるらしい。
でも…なんだろう?教えどきって?
とりあえず立ち話もなんだし、座れって感じでお姉ちゃんが促して、わたしとお姉ちゃんは向かい合わせに座った。
お姉ちゃん(柚)
…まあ、一から話すと長くなるんだけど…
恋
…うん
お姉ちゃん(柚)
まず、私は…いえ、あなたも、人間じゃないわ
恋
…!
お姉ちゃん(柚)
それと、私はあなたのお母さんのいとこの子供…だというのも嘘なの…
恋
え…!
人間じゃない。
という言葉以上に、お姉ちゃんの言葉が理解できなかった。
嘘…?って、じゃあ、どういうことなの?お姉ちゃんとお母さんは血の繋がりがないの?
お姉ちゃん(柚)
いえ、違うわ。私と恋のお母さんはね…実の姉妹なの
恋
え…ええっ!
ち、ちょっと待って!
頭の回転が早いわたしでも理解が追いつかない。
え、えっと、整理すると、お姉ちゃんがいとこってのがうそで、本当は実の姉妹だってことでしょ?
あ…、ちょっとわかってきたかも。
混乱していたわたしの脳が、静まって行く。
お姉ちゃんの言葉も、自然と頭に入って行く。
わたしは人間じゃない、ということでさえ、受け止めきれていた。
そうだ。まずは冷静になれ。そしたら、何か見えてくるはず…
それからのお姉ちゃんは、たくさん話してくれた。わたしの秘密と、わたしの過去、あの二人組の秘密、妖怪の秘密、それから…
わたしの母であり、妖魔界の女王であった、相川玲衣(あいかわ れい)の話も…

ここでは書ききれないから、全ては次の話で記すね。

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