第2話

変な夢とドタバタの朝
274
2017/11/10 23:36
わたしは、妙な場所に立っていた。
周りが業火に包まれ、大人や子供が叫びながら逃げ惑っている。
ただ…
恋
何も聞こえない。
それに、何も感じない。
こんな業火のなか、普通立ってたら、火傷の一つや二つはするだろう。でも、熱くも、痛くもない。それに、逃げ惑う人達の悲鳴も聞こえない。そして…わたしは、あることに気づく
恋
…え?
わたしの真正面に、立っている男の子がいた。その子も、火傷じゃあ一つも負わず、ましてや、汗一滴もかいていない。わたしと同じように。無言でこちらを見る顔は、業火の中とは思えないほど涼しげだった
???
???
恋
…あ、あなたは、誰…?
???
???
無言。何も答えようとしない
恋
…誰よ…?
???
???
反応なし。じーっとこっちを見るだけ。これ以上答えようとしないのなら…と、わたしが一歩踏み出した、その時だった
???
???
…君は
恋
…え?
突然、その子が喋り出した。…何だろう。周りの音が聞こえないから、聴覚が異常に働く。
???
???
…君は、特別な人間なんだ…
恋
…は?
???
???
君は、誰よりもすごい力を、持っている。
な、何を言っているの?
???
???
君は、世界を変えられるかもしれない…
恋
ちょ、ちょっと…
???
???
…じゃあ
それだけ言うと、その子は、火の海の中に消えていった
恋
…ま、まって!
考えもせず、足が動く。なぜだかわからなかった。でも、その子は、知らないていけない子かもしれないから。いや、絶対そうだ。言っていることはよくわかんないけど、わたしに何か、とても大切な事を教えようとしてくれている。そんな気がした。
恋
ねえ、あなたは誰?!教えて!
必死に、火の中へ呼びかけながら、走り続ける。
恋
はぁ…はぁ…
走って息が切れても、走り続ける。あの子と…ちゃんと話しをしたい。
恋
…あっ!
でも…途中で、地面の出っ張りにつまずいて、よろけてしまった。
転ぶ…!
そう思った直後だった。
ドスンッ!
恋
…ふ、ふぇ…?
重たかったまぶたがひらかれ…そこは、火の海ではなく、いつものわたしの部屋だった。真正面には天井がある。どうやらわたしはベッドから落ちたらしい
…ってことは?
恋
…ふ、ふえぇ…。夢ぇ…?
なーんだ。ちょっと冒険してみたいなー。
…なんて事を考えてたらほんとに変な夢を見てしまったよ。
さーてと、気を取り直して、二度寝しましょか。
え?どうして二度寝をするのかって?学校はどうしたのかって?そりゃーわたしは不登校だから…というわけではなく。
実は今は春休み中。つまり、いつでも寝てていいってわけ。
よーし、じゃあ二度寝を…
ボフッ!
何か柔らかいものが、突然わたしの顔にぶつかってきた
恋
っひゃっ!
柔らかいとはいえ、ものすごい勢いできたもんだから、後ろにおもいっきり吹っ飛んでしまう。
恋
…うー…い、いたぁい…
華那
痛いじゃないっ!
上から幼い声が聞こえてきた。…こんな口調でわたしにエラソーに話す子は一人しかいません。
恋
かーなぁーっ!痛いじゃないの!
華那
うるさい!お姉ちゃんが起きようとしないのが悪いの!
ベッドに立って、腰に手を当て、こっちを上から目線で見下ろし、わたしのきれいな顔に何かを投げてきた失礼な少女は、わたしの(一応)妹の華那。見ての通り、気がわたしより強い女の子です。
…にしても、お姉ちゃん相手にこんな失礼な妹はいるのだろうか。いる人ー、手を挙げてくださーい。
恋
ちょっと!寝ようとしてるのにこれ投げないでよ!
わたしは、下に転がっている枕を指差した。これを、華那が顔に投げつけたのだ。
華那
だーかーらー!ベッドから落としてもなかなか起きようとしないから枕を……
恋
ちょ!あんたわたしをベッドから落としたの?
思わず遮ってしまう。
華那
お姉ちゃんしぶといもん
恋
だからって落とすのはないでしょ!
華那
そうでもしないと起きないの!あたし何回も呼んだのに!
恋
そもそも、何で起こそうとするのよ!今春休みじゃん!
それを言うと、華那は一瞬ポカンとあっけに取られた。…な、何?正論を言っただけなのに…?
華那
お、お姉ちゃん、何言ってんの?
恋
…え?
華那
今日4月10日だよ!学校だよ!新学期!
恋
…え?えぇっ!
う、ウソッ!
恋
そ、そんな事…
信じられなくて、カレンダーを見る。わたしは日付がカレンダーを見て一瞬でわかるように、毎日チェックをつけているのだ。…うん。4月9日のところに最終チェックが付いているね。
…ってことは
恋
わ、わぁぁぁっ!きょ、今日学校だあぁぁぁっ!
華那
だから言ったでしょー!
な、何でこんな大切な事忘れてたのよわたしー!バカバカバカッ!
わたしは飛び起きて、光の速さで階段を駆け下りる。2階からリビングの様子は見渡せるので、みんなが何をしているのか一瞬でわかる。
えーっと、ソファでくつろいで、新聞を読んでいるのがうちのお兄ちゃんの政也(まさや)ね。……にしても、ソファで新聞を読むって…まるでどっかのオヤジみたいだ。高校生がフツーこんなことするかな?
で、キッチンでフライパンなどを丁寧に洗っているのは、ファッションデザイナーでうちの主婦担当のお姉ちゃんこと柚(ゆず)
恋
お、おはよ!お姉ちゃん、お兄ちゃん!
お兄ちゃん(政也)
…ん?ああ恋。おはよう
お姉ちゃん(柚)
恋遅いっ!スープ冷めちゃうでしょ!
もう、机の上には美味しそうな朝ごはんが並んでる。
恋
ごめん!お姉ちゃん!
席について、
いただきまーす!と、言って、食パンにジャムをかけて食べる。
んんっ!おいしい!やっぱお姉ちゃんの料理は絶品だなぁ
華那
ゆっくり味わってる場合じゃないよ!お姉ちゃん!
ああっ!そうだった!
わたしは急いでパンを口に突っ込み、それ以外のご飯も超特急で食べ、猛スピードで歯磨きをして、着替えて、髪の毛整えて…全部終わる頃には7時30分頃…ふぅ、ギリギリだぁ。
ランドセルを背負ったわたしは、靴を履き、玄関の鍵を開けて、外に出ようとして…おっと、大事な事を忘れてたよ。
恋
お姉ちゃん!行ってきまーす!
お姉ちゃん(柚)
うん、行ってらっしゃい
華那
お姉ちゃん!また後ででね〜
恋
うん、また後で!
お兄ちゃんは高校生だから、もうとっくに家を出ていて、わたしは、お姉ちゃんと華那にあいさつをすると…
さわやかな青空の下に飛び出したのでした。

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