第8話

不思議な力
128
2017/12/09 12:51
翌朝…
華那
…………
お姉ちゃん(柚)
…………
お兄ちゃん(政也)
.…………
朝起きると、無言で3人に見つめられた。
恋
どうしたの…?
寝ぼけ眼のわたしは、目を擦りながら三人に聞く。
お兄ちゃん(政也)
いやだってなぁ…
お姉ちゃん(柚)
恋が……
華那
こんな早くに起きるんだもん
…三人そろって超失礼。
今確かに六時。普段ならわたしはグースカピースカ寝ているところだ。
そのわたしがなぜこんなに早く起きたのかと言うと…………うぅ、思い出したくない…
恋
…………
わたしは思わず体を震わせる。
華那
お、お姉ちゃんどした?
熱でもあんの?
珍しくわたしの心配してくれる華那。
恋
…大丈夫。ありがと
短くお礼を言った後、わたしは机について朝食を食べ始めた。
この時も静かだったから、お姉ちゃんやお兄ちゃんから、ほんとに熱でもあるんじゃないかって心配されたよ。
何でわたしって静かにしていたらみんなに心配されんの?大丈夫だよ!至って健康だよ!!

…あ、ごめんなさい…せっかく大事な勉強や用事の時間を削って見てくれているのに、ただのわたしのグチ聞きタイムになっちゃって…
恋
…行ってきまーす
今日の空はどんより曇り。足取りがさらに重くなる。公園にまだ千江は来ていなかった。
恋
…大丈夫かな?
おばけに呪い殺されたんじゃないかな…なんてバカげた事を考えつつ、千江を待った。
しばらくして、ランでセルらしきものを背負った子がこちらに近づいて来た。
恋
あ!千江おは………………うっ
近寄った少女の顔を見た瞬間、わたしは思わず小さなうめき声を発してしまう。
恋
ち、千江……
千江
千江
…あ、恋ちゃん、おはよう
千江は……酷い顔をしていた。目の下にクマを作って、その笑顔もきごこちない。いつものキレイな顔の千江の面影は少なかった。
恋
ち、千江、大丈夫…?
千江
千江
うん、大丈夫
いやいやいやいや、だれがどう見ようと大丈夫じゃないよ千江!
千江
千江
うん…、昨日のことを考えてたら一睡もできなくて…
…かける言葉が見つからない…。よっぽど、千江はショックだったのだろう。わたしだって、あんなことは信じない…って思ってたのに、実際、目の前で起こっちゃったからね…怪奇現象。
恋
…とりあえず、学校いこ
千江
千江
…そうだね…
そう笑顔で頷いた千江だけど…それが作り笑いだって分かっていた。
そして…わたし達は、学校へ行く道の間、会話ゼロだったのでした。
理子
理子
恋ーっ、おはよ……
朝、教室に着くと、いつもの恒例行事で理子が抱きついて………来ようとしたが、わたし達のゲンナリ顔を見てピタリと動きを止める。
理子
理子
れっ、恋!千江!どーしたの!?
恋
…ううん、何でもないよ…
理子
理子
いや、その顔、どう見ても尋常じゃないって!
千江
千江
…あのね、昨日私、とても悪い夢を見たの。そして朝に学校きたら、恋ちゃんも悪い夢を見たって…
いや、千江、いくら理子が正直者だからって言って、さずがにそれは…
理子
理子
あ、そうなんだ!
いや信じるんかい〈ビシッ〉!
…なんか朝1番から疲れたよ。でも、今日の中でいつもと違う会話はそれぐらい。あとはふつうにお喋りして、授業受けて…
いつもの日常が、いつも通りに過ぎようとしていた。……あの時が来なければ。

それは…四時間目の体育の時に起こった…
バシッ
思いっきりサーブを決めてやる。
亜衣菜
亜衣菜
おぉー、恋ちゃんすごい!
亜衣菜がわたしのキレイなサーブを見て歓声をあげる。
周りからもおぉーっと言う声が上がる。
恋
へへっ!ざっとこんなもんよ!
わたしは亜衣菜にガッツポーズをする。
白河先生
はーい、じゃあ相川さんのチームが6点で…決勝に進出です!
お!やった!
同じチームの子達
やったー!
みんなも歓声を上げる。
千江
千江
恋ちゃん!やったね!
恋
うん!バレーボールは得意だからね!まあ、楽勝?ってな感じかな〜?
亜衣菜
亜衣菜
でも恋ちゃん、油断したらダメだよ。だって決勝の相手は…
そっか、そうだね…決勝の相手は…
白河先生
それじゃあ、試合始めますよー!
白河先生の言葉を合図に、相手のチームの子達がネットを挟んで並ぶ。
祐魅
祐魅
相川さん達!ちゃんと立ち位置に着いて!
同じチームの祐魅ちゃんが叫ぶ。
恋
あ、うん、ごめん!
祐魅ちゃんに言われて、わたし達は立ち位置に着く。
亜衣菜
亜衣菜
あ、あの子…瀬凪ちゃん…
…そう、あっちのチームには、小四にしてバレー部のエース、瀬凪(せな)ちゃんがいるのだ。瀬凪ちゃんのボールは、誰も見きれたことはないらしい…
瀬凪
はっ!
瀬凪ちゃんがいきなりサーブを決め込んで来る。
恋
うわっ…
ほ、本当に早い!見切れない!…と、思った瞬間だった…

頭の中に…地に大きな音を立てて、落ちるボールの様子が…

それは、カメラのシャッターを切るぐらいに短い時間だったけど、わたしの足は自然と、ボールが落ちた場所に動いていた。まだボールは宙に浮いている…
恋
……ッ!
ボールが来た瞬間、わたしは後ろにトスを回す。ちょうどそこには、運動神経がいい亜衣菜がいた。
亜衣菜
亜衣菜
あっ…
呆然としていたらしい亜衣菜は自分の方向にボールが飛んで来たのを知って、相手側にサーブを食らわした。
バシッ
相手はなぜか呆然としていたため、その亜衣菜のサーブを受けることはできず、地面に大きな音を立ててボールが落ちた。
恋
…………
千江
千江
…………
亜衣菜
亜衣菜
…………
祐魅
祐魅
…………
同じチームの子達
…………
わたしも、同じチームの子達も…呆然としていた。いや、わたし達だけじゃない、クラスのみんなも…
クラスメイト1
…うそだろ?
クラスメイト2
今、ボール、受けたよね、相川さん…
クラスメイト達がざわつく。
絶対に見切れない、と言われている瀬凪ちゃんのボールを受けたのだ。それは、わたしだって驚いている。
でも…わたしは、それとは別のことに驚いていた。さっき…わたしはまるで、未来が見えたかのように…ボールが落ちる場所がわかった。

これ、アニメとかで言う…未来予知ってヤツ?
普通なら、そんなの有りえないって思うだろう。

でも、実際それと同等なぐらいに不思議なことがわたしの周りで起きている。
じゃあ本当に………

わたしは、未来を予知したの…?
…一人、遠く離れていて壁にもたれかかっていた彼は、その様子を見て、ポツリとつぶやいた。
???
…もうこれで確実だな

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