「はーい、じゃあ、座ってくださいー」
ホームルーム開始のチャイムが鳴り、先生が言った。
「文化祭まであと2週間になりました。なので、みんな実行委員を中心に頑張っていきましょう。」
やることはちゃんとやるのに、身だしなみには興味が無いのかな?
私の席は、前から3番目、廊下側から4番目という真ん中ら辺の席。
だから先生の事がよく見える。
今日もなんとなーくメガネ曇ってるし。
前髪もメガネにかかってる。
もうちょっとちゃんとしたらモテそうなのに。
なんて考えながらじーっと先生を見ていた。
すると、目が合い、
「藤咲さん、何かありますか?」
と聞かれた。
「あ、いえ!なんでもないです!」
「そうですか、じゃあ、ホームルーム終わりますね。」
きりーつ!気をつけー!礼ー!
いつも気合が入っている野球部男子が号令をかけて、ホームルームは終了した。
「あなた!数学のノート見して!頼む!」
号令をかけて一目散に私の所へ来たのは、幼馴染の陸だった。
「もー、陸またぁ?ちゃんとやって来なよー。」
と言いつつもノートを差し出した。
「ありが…」
陸が取る瞬間に上に引き上げた。
「駅前のクレープ食べたい。」
陸は、え!という反応をしたあと、渋々、
「…分かった。」
と、返事をした。
「はい、交渉成立!」
私はまた陸にノートを差し出す。
「あなた…。お前は俺の小遣い減らす気か!?」
「えー?いいじゃん!ギブアンドテイクってやつ?」
「というか陸がやって来ないのが悪いっ!」
すかさず、近くにいた千紗が言う。
「よく言った!」
いぇーい!とハイタッチした。
すると、陸は悔しそうにノートを写し始めた。
なんか、しゅん。ってしてて可愛いなぁ。
なんて千紗と言いながら今日も一日が始まった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!