第32話

Chapter 32
6,047
2017/12/10 06:37
その後、家の中の確認をした。

特に取られているものはなかった。

そして、一度外に出る。

「では、ご家族に連絡をさせていただきたいんですが…。その方は…?」

「あ、えっと…。」

どうしよう。

「高校の教師をやってます。高橋です。」

あ、大丈夫かな?

でも、抱き合ってるところは見られてない。

「あ、先生でしたか。」

「はい。今パトロール中と言いますか、見回りをしていまして。」

「なるほど。では、ご家族は?」

「今、海外主張に出ていていないんです。」

続いて私が答える。

「そうでしたか。では一応ご連絡させていただいても?」

「はい、」

私はお母さんの携帯番号を教えた。


「あ、もしもし。〇〇警察のものなんですけれども…」

などと、今まであったことを説明した。

電話越しに少しだけお母さんの声がする。

『あぁ、そうでしたかご心配をおかけしました。』

といつもと違う口調で言う。

穏やかで、優しそうな感じ。

いつもは全然違うのに。

外面だけはいいんだから。

「あ、娘さんに代わりましょうか?」

『はい、お願いします。』

警察官は私に電話を差し出す。

ペコっと頭を下げて受け取った。

「もしもし、」

『大丈夫なの?』

イラついているようだった。

「うん、なんとか。」

『そう、まさか日本に帰ってきてなんて言わないわよね?全く、もう。』

「大丈夫だよ。大丈夫。」

なんだか自分に言い聞かせているようだった。

“大丈夫”って。

『そう、じゃあいいわね。余計な心配かけさせないで頂戴。』

「…。」

私はグッと手のひらを握り締める。

心配なんてしてないくせに…。

「ごめんなさい。」

『はぁ、』

盛大なため息。

『じゃあ何かあったら言いなさい。お母さん忙しいから。じゃあ。』

と、早口でいい、電話を切った。

ツーッツーッという音が聞こえる。

ふぅ。

「ありがとうございました。」

と、笑顔を作って電話を返す。

あ…。

警察官はなんだか、可愛そうだ。と言いたげな表情をしていた。

全部…聞こえてたんだ。

「ご心配をおかけしました。もう大丈夫です。ありがとうござました。」

と頭を下げる。

「あ…はい。ではこれで失礼します。何かあればまた呼んでください。」

「はい」

お互いに頭を下げた後、パトカーに乗って行ってしまった。

プリ小説オーディオドラマ