「ん…」
ゆっくり目を開けると、そこには見慣れた天井があった。
「起きたか?」
「先生…」
ずっとそばに居てくれたのかな?
「保健の先生が風邪だろうって。結構熱あったぞ。」
「そう…何度?」
「38,7度」
「うわ、マジか。もうすぐ文化祭なのに…」
「まぁ、それまでに治せ。あと5日だ。」
「そっか…。」
しばらく私は天井を見つめる。
あれ…?
「ん?え?てかなんで私ここにいるの?」
「お前倒れただろ?」
「いや、それは覚えてる。でも、ここ、私の部屋じゃん…」
そう。ここは私の部屋。
学校で倒れて、保健室なら分かるんだけど、、
「あぁ、そう言うことか。お前の親が居ないから送ってくって言ってここまで運んできた。」
「あ、ありがとう。」
「本当だよ。お前重すぎ。」
「うわ、そう言う事言っちゃうんだ。」
そういえば、服も着替えてある。
着替えさせてくれたとか??
まぁ、そこは触れないでおこう。
「ねぇ、今何時?」
「7時過ぎ。」
「え!私そんなに寝てたの!?」
「あぁ、保健室で最初は寝かせてたんだけど、下校時間になっても起きねーから。」
「なるほど。」
「んじゃ、帰るわ。飲み物と食い物はそこに入ってる。」
「え、ちょっと。待って。」
私は手を伸ばして服の裾を掴む。
「ん?」
と、先生はこちらを向いた。
「あ…」
私もとっさの行動に驚いた。
“帰らないで。一緒にいて。”
そう思った。
けど、言えない。言えなかった。
きっと言ったら先生は居てくれる。
でも、そしたらきっと私はどんどん先生を好きになっちゃう。
一瞬でも、一緒にいてほしい。帰らないでほしいって思った自分が馬鹿みたい。
「なんでもないや。またね先生。ありがとう。」
「おう、またな。」
先生は手を振ってくれた。
すると、先生は振っていた手を私の方に伸ばして、頭を撫でてくれた。
そして、微笑む。
「早く元気になれよ。」
私は泣きそうになった。
もう、先生。優しくしないで。
先生といると…どんどん好きになっちゃうじゃん。
でも、私はこの時思った。
もう、諦められない。
ねぇ、先生。人を好きになると、“好き”って気持ちが溢れてくるんだね。
好きって分かったら、
好きって気づいた瞬間から、もうこの気持ちは止められない…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!