私は先生に続いて、急いで出た。
「お待たせ〜。」
リビングでテレビを見ている千紗に声をかける。
「いーえ、ごめんね、急に来ちゃって。」
「大丈夫だよー。心配して来てくれたの?」
「まぁーね。うふふ。」
「もう、千紗好きー!」
「私もあなた好きー!」
私は千紗に抱きつき、千紗も私をだきしめてくれた。
あ〜、幸せ〜。
こういう友情を感じられるのも良い。
「あ、そういえばお父さん帰って来てるの?」
「え?なんで?」
「だって、玄関に男の人の革靴が置いてあったけど。」
あっ…。それ先生のじゃん…。
「あ、そっか、なるほどね。昨日お父さんがいたんだけど、違う靴で行ったみたい。」
スラスラと嘘が出来たことに、自分でも驚く。
千紗に嘘をつく。
それは、小さな事でも心に引っかかった。
本当は、全部言いたい。
私が、先生を好きな事も…。
でも、それは先生に確認してからにしよう。
もしダメなら…隠すしかない。
「なるほどね。ねぇ、あなた。」
「んー?なに?」
私は紅茶を淹れようと立ち上がりながら言う。
「好きな人できた?」
「えっ!?な、なんで?」
「いや、なんか最近可愛くなったなぁ。って。思ったから。」
「い、いや!そんなわけないじゃん!?」
「そー?なんか、普通に乙女感が増したって言うか?なんて言うか…ね!」
「ね!って言われても…。」
「まぁ、そっか。でも、好きな人できたら教えてよ〜??」
「わかった。千紗もね!」
それから、昨日の私が倒れた後の事とか、今日の出来事を話してくれた。
「あ、そう言えば、あなたが倒れた時、高橋先生かっこよかったよ!」
「え?」
どう言う事?もしかして、バレたのかな?
「いやぁ、一目散にあなたに向かって行って、お姫様抱っこで保健室まで運んで行ったんだよ!」
「そ、そうなんだ。」
うわぁ。恥ずかしい。
「で、でもさ、そんなの生徒だったら誰でもするでしょ。」
「どーかなぁ。先生、必死だったし。」
ニヤニヤしながら見てくる。
「いや、待って。あの見た目で誰が好きになるの?」
「いや、待って。誰もあなたが先生を好きなんて言ってないじゃん。先生があなたをだよ?」
私をマネするように言う。
「えっ?」
そう言う事?
「ありえるかもよ?」
再びニヤニヤしながら言う。
「いや、ありえないな。」
ありえて欲しい気持ちもあるけど、、
ないかな…。
そのあと、30分程話したところで、千紗が立ち上がった。
「じゃあ、そろそろ帰ろうかな。あなたもちゃんと体調しっかり整えてね。」
「うん、ありがとう。またね。」
私は玄関まで見送り、部屋へ向かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。