第50話

Chapter 50
5,610
2017/12/29 09:13
「ふぅ」

私は階段を登り、部屋へ行く。

ガチャ

「お待たせ〜」

「おう、お疲れ。」

先生は机で仕事をしていた。

「メガネかけてる!」

「なに言ってんだよ。いつもかけてんだろ。」

いや、前髪あげてて、ちゃんと伊達じゃなくて綺麗なメガネをしてるなんて…

「カッコいい…」

思わず呟いてしまった。

あ、やっちゃったよ。

もう、こうなったら…

「うん、カッコいい。髪型が違って、本物のメガネに変わっただけなのに。」

「は、はぁ。」

先生は驚いた様に言う。

「先生、メガネなんでかけるの?」

「仕事する時だけな。」

「ふーん。」

すると、よし。と言い、立ち上がる。

「じゃあ、俺もそろそろ帰るわ。」

「うん、わかった。ありがとね。」

「おう、」

と、言いながら書類をまとめて帰りの支度を始める。

「あ、もっかい熱測ってみろ。」

「はーい。」

私は先生から受け取った体温計を脇に挟む。


ピピピッピピピッ

「37,3度。まぁ、大丈夫かな。」

「そうだな。でも、微熱だから今日も早く寝ろよ。あと、明日も良く考えて学校来い。」

「うん、心配してくれてありがと。」

私は、千紗と同様、先生を見送る。

「またね。」

「おう。早く元気になれよ、」

と、私の頭を撫でた。

あっ、やばい。


好き。


その気持ちが溢れる。

「うん!」

私は、元気よく返事をする。



ガチャ

ドアを開けて、先生が出る。

そして、私も続いて、少し前に出た。

すると、先生が急に止まった。

そのせいで私は先生の背中にぶつかる。

「いてっ。もう、急に止まらないでよ。先生。」

すると、


「小林…」


と、先生が呟く。

「…えっ?」

先生の背中から外を覗くと、千紗が目を丸くして立っていた。

「えっと、忘れ物しちゃったから、取りに来たんだけど…。」

「えっと…。」

私はなにを言えばいいのかわからなかった。


頭が真っ白になる。


すると、先生が静かに言った。


「あなた、お前が心から信じることが出る人になら言え。俺は、お前が信じるなら信じる。」


「あとは…自分で決めろ。」


先生…。


「ありがとう。」


私は先生の背中に言う。

「じゃあな。」

先生は千紗の横をすり抜け、行ってしまった。



先生。


ありがとう。


私が信じる人は信じるって言ってくれて本当に嬉しかった。


私、千紗に言うね。


私は千紗を信じる。


だから先生も信じて…。


「千紗。話したいことがあるの。聞いてくれる…?」

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