第55話

Chapter 55
5,255
2017/12/29 09:13
「好き…」

そう言った時、先生は、複雑そうな表情をした。

驚きもあるだろう。でも、やっぱり、困ったような表情だった。





「…ごめんね、」



私は無理やり笑って言う。



私はそれを言うので精一杯だった。


ごめんね、先生。好きになっちゃて。


ごめんね…。



私は立ち上がり、屋上のドアへ向かう。


ドアノブに手をかけた時、腕を掴まれた。


私は振り返らない。


だって…



こんな顔見せたくない。


ボロボロとこぼれ落ちる涙。


先生。なんで引き止めるの。



「やだ…。離して。」



震える声で言う。


それでも先生は離さない。



「先生、先生は私を引き止めて何がしたいの…?



先生は私の期待には答えられない!そうでしょう!?」



泣き叫びながら言う。




「なら、こんなっ…引き止めるようなこと…しないで…。」




そう言うと、先生が手の力を抜いた。


それと同時に私の腕も垂れ下がる。



あぁ、もう。



そう、それが先生の答え。



私はドアを開けて、走って、走って、走った。





この心の苦しさを、紛らわせるかのように…。

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