第56話

Chapter 56 ー先生目線ー
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2017/12/29 09:13
「屋上行くか?」

「え?いいの?」

「俺の特権だからな。」

そう言って、俺は引き出しから鍵を取り出す。

「行くか?」

「行く!」

あなたは、目をキラキラさせながら言う。

犬みたいだな。

「ついてこい」

「はーい。」




ガチャ

俺は屋上のドアを開ける。

「うわぁ。」

今日も、綺麗だな。

これをあなたに見せたかったんだ。

なんて、臭いセリフ言えねーけど。

「綺麗…。」

あなたは、この景色に見とれていた。

連れてきて正解だったな。

そんな事を思いながら、あなたの横顔を見つめる。


「なぁ、あなた。」


俺はタバコに火をつける。

綺麗だな。

そう言いそうになった。

それは、空が、景色がじゃなくて、あなたが。

「ん?」

あなたはその場に座って、空を眺め始めた。

「なんでもない。」

「そう言えば、昨日あった事を言うために来たんだろ?」

「うん、そうなの。」

「どうだった?」

「んーとね、驚いてたよ。思わず笑っちゃった。イケメン!って大絶賛!」


ふふっ、と笑いながら言う。

俺ってそんなにイケメンか?


「あとね…話してくれてありがとう。って言ってくれた。」


「そうか、良かったな。」

うん、良かった。

お前が小林を信じるなら、俺も信じるからな。

俺は心の中で呟く。

「うん。」

「ねぇ、先生…ありがとう。」

「何がだ?」

「いっぱいだよ。」

そう言いながら、俺を見る。

「お前が信じるなら俺も信じる。そう言ってくれて本当に嬉しかった。」

「あと、心配してくれたし。看病してくれたし。だから、ありがとう。」

「別に、俺は何もしてない。」

少し背中を押しただけだ。

あとは自分で決めたんだから。


俺はあなたの方へ向き、柵に寄りかかる。


すると、あなたと目があった。

俺は、あなたの事をどう思ってるんだろう。

ふと、そう思った。

俺は、あの日から…。



「ねぇ、先生…」




「好き…」



俺は一瞬、何を言われているのかわからなかった。

あなたが俺を好き…?

そんなわけ…。


「ごめんね。」


あなたは無理やり笑って言う。


その一言で何を意味しているのかがわかった。

“好きになっちゃてごめんね”

そう言う意味だったんだろう。


あなた…。


あなたはドアへ向かう。

俺はとっさに腕を掴む。

だが、あなたは振り向かなかった。

ポロポロと涙をこぼしているのが夕日に照らされて見えた。




「やだ…。離して。」



震える声で言う。


一瞬、離そうかと思った。



でも、俺はあなたを離したくなかった。



「先生、先生は私を引き止めて何がしたいの…?



先生は私の期待には答えられない!そうでしょう!?」



泣き叫びながら言う。



図星だった。


あなたの期待には…答えられない…。



「なら、こんなっ…引き止めるようなこと…しないで…。」




俺は、掴んだ手を離す。




そう、それが俺の答え…。

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