ー次の日ー
「はい、いよいよ文化祭が明日になりましたー!」
先生は元気よく言う。
「今日は、午前中で授業が終わりなので午後は準備に取り掛かってください。」
はーい、とみんなが返事をした。
みんなワクワクしてるのが伝わってくる。
私も楽しみ〜!
千紗といっぱい回るんだ〜。
午前中はあっという間に過ぎ去り、みんなで作業に取り掛かる。
机に白いデーブルクロスを引いたり、グラスやお皿を用意したり、メニューの準備をした。
裏方(料理を作る人)、メイド&執事、呼び込みの三つをシフトチェンジしながら行う。
「あ、そう言えばあなたちゃん。メイド服試着してくれた?」
衣装係の莉央ちゃんが聞いてきた。
ふと、試着した時のことが頭をよぎる。
胸がギュウッと苦しくなる。
先生…。
「うん!ありがとう!本当に可愛かった!」
「本当!?よかったぁ〜。明日楽しみにしてるね!」
「うん!」
私は、クラスのみんなと教室を飾りつけしたり、明日の食材を切ったりした。
「お疲れさまぁー!!じゃあ、あとは明日を待つだけ!みんな頑張ろうね!」
文化祭実行員が気合を入れながら言う。
「うん!がんばろーね!」とか、「一位目指すぞーっ!」って言ってる男子もいた。
明日楽しみだなあ。と、みんな笑っていた。
ふと、後ろのドアを見ると、先生がドアに寄っかかってこちらを見ていた。
その表情が私の心を奪う。
先生は、私達を見て、優しく微笑んでいた。
私ならわかる。
いつもなら楽しくなくても、キャラで笑って居る時があった。
でも、これは心からの感情が現れていた。
すると、先生が私を見た。
目が合う。
私はとっさに目を逸らしてしまった。
だって…先生…。
私を見た時、一瞬だけど、申し訳なさそうな、悲しそうな表情をした。
先生、私はそんな顔させたかったんじゃないの。
ごめん、ごめんね、先生…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!